土地の歴史が刻まれた土壌の魅力を紹介「美しき日本の土壌図鑑」加藤拓著

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「美しき日本の土壌図鑑」加藤拓著

 日本各地で採取した土壌の断面標本を紹介するビジュアル図鑑だ。

 収録された断面標本は、地表面から下層まで掘った土壌の垂直面を樹脂で固めて作成する「薄層モノリス」と呼ばれるもの。その最大の利点は、自然状態の土壌構造を忠実に観察できることだ。

 日本の土壌の大部分は、火山灰を母材として生成される「黒ボク土」、森林下で発達する「褐色森林土」、河川が運んだ堆積物からなる「沖積土」の3種の土壌型に分類される。

 しかし、同じ分類の土でも採取した土地で色合いが異なる。気候や成分の流失や酸化、さらに有機物の集積などで、赤、黄、黒、灰色となり、それらが層を形成する。

 本書では、初心者にも親しみやすいように学術的体系ではなく、各標本を色によってカテゴリー分けをして収録する。

 まずは「赤の土壌」から。そのひとつは、山口県の日本最大のカルスト台地・秋吉台で採取されたもの。石灰岩中の鉄が風化で酸化して赤い土壌が生成されたと考えられてきたが、近年では大陸由来の黄砂がこの赤い土壌の主な母材ではないかと考えられているそうだ。

 佐賀県鹿島市の果樹園で採取された「橙の土壌」は、そのまま風化して残った岩石によってモザイク模様にみえる。土壌の容貌が、長崎の方言で「どんく」と呼ぶカエルの模様に似ていることから「どんく盤」と呼ばれている。

 以降、黒や茶、白、灰、黄色など色別に紹介。

 中には愛知県小牧市で採取された桜色の土壌もある。これは砂の層と火山灰層が交互に堆積した知多ピンク火山灰層が母材ゆえに生じたそうだ。

 著者は「土壌とはその場所の歴史を静かに語る書物のようなもの」という。気候や地形、生物の営み、時間が雄弁に刻まれた土壌の知られざる魅力を教えてくれる一冊だ。 (家の光協会 3410円)

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