遠藤航〈後編〉代表入りは不透明も…いずれサッカー界の要人になる人材です(Jリーグ湘南元監督・反町康治)

公開日: 更新日:

MF遠藤航(英プレミア1部リバプール/33歳)

 5月15日の北中米W杯メンバーまでカウントダウン状態に入っている。主将の遠藤の早期復帰が待たれるところだが、森保一監督はどのような最終決断を下すのか。そこはJ湘南時代の恩師・反町氏にとっても興味深い点だろう。遠藤の扱い、そして日本代表の戦いについても聞いた。【前編】からつづく。

  ◇  ◇  ◇

 ──2026年W杯は2022年カタール大会と同じ登録メンバー26人体制です。

「2018年ロシアW杯までの登録23人.3人交代だったら、スペシャリストを何人か入れてもいいとは思いますが、やはり複数の役割を担える選手の方が有利。航のようにボランチ、インサイドハーフ、3バック、4バックのSBを柔軟にこなせる優れた人材がいるのなら、メンバーに入れておきたいと考えるのは、監督なら当たり前のことでしょう。ただ、W杯は義理人情の世界じゃない。たとえば佑都(長友=FC東京)が入るのか、入らないのか、物議を醸していますが、実力的に26番目に入っていなければ、最初からテーブルに乗せるのは難しい。それだけ厳しい世界なのです」

 ──遠藤選手は、2023年に発足した第2次森保体制ではキャプテンとしてチームを引っ張ってきました。こんなことになるとは想定外でしょう。

「航は若い頃からケガが少なく、長い離脱や大きな挫折もなかった。そんな選手でも、試合中の負傷は避けられないところがあります。特に英プレミアは日程が超過密だし、試合の強度も非常に高い。リスクの高いリーグなのは間違いないですね」

 ──森保監督は遠藤選手を入れるべきか、頭を悩ませているでしょう。

「ケガが治るという確証がなければ難しいでしょうね。遠藤本人とは状況に応じてコンタクトを取り合うことはありますが、2月のケガ以降は連絡を取っておらず、今の状態がどうなっているのか、知りません。とにかく順調に回復してくれればいいと願っています。森保監督にとって難しいのは、メンバー発表からW杯初戦のオランダ戦まで約1か月の時間があることですね。今は離脱していても、その段階になれば戻れる選手がいるかもしれませんし、逆に直前にケガをする選手もいる。5月15日の時点でベストな選手を選ぶしかないのでしょうが、見極めが非常に難しいですね」

 ──3月のイングランド戦は見ましたか?

「ざっとですが、見ましたけど、今の日本代表はあの試合で見せた力は出せると思います。拓実(南野=モナコ)と建英(久保=レアル・ソシエダ)がいない中でも、シャドーで起用された選手たちが、スムーズに馴染んで<違い>を作れたのは良かったです。薫が(サイドから)中に入ると違ったリズムが生まれますし、中村敬斗(スタッド・ランス)も、チーム戦術に適応しながら自分らしさをうまく出せるようになった。何人か抜けても戦力を維持できるようになったのは、日本の進化です。清水育ちの鈴木唯人(フライブルク)のような若い選手が頭角を現しつつあるのも良いことだと感じています」

 ──かつての日本代表は主力が抜けると戦力ダウンを強いられるケースもありました。

「そうですね。森保監督が現役だった93年の『ドーハの悲劇』の時も、左SBの都並敏史さん(浦安監督)が離脱して穴埋めに苦労したということがありましたが、今はひとつのポジションに3~4人は人材がいる。航のボランチにしても鎌田(大地=クリスタルパレス)、佐野海舟(マインツ)、田中碧(リーズ)、ジョエル(藤田譲瑠チマ=ザンクトパウリ)といった面々がいる。仮に航を選べなかったとしても、この選手層の厚さは前向きなポイントでしょうね」

「元技術委員長として、気になる」

 ──2026年W杯は欧州各国リーグが終了した直後。広大なカナダ、アメリカ、メキシコでの開催という難しさがあります。

「前回の2022年大会と違って移動や時差もありますし、気象条件や環境が試合会場ごとに違ってくるので本当に悩ましいですね。今の日本代表はほとんどが欧州組で、ハードなシーズンを終えてから再スタートするという意味でも、シーズン中開催だったカタールの時とは様相が異なります。日本代表は5月31日にアイスランド戦を東京・国立競技場で行ってからモンテレイ(メキシコ)へ移動すると聞いていますが、選手のコンディションがまちまちでチームをどう熟成させていくのか、難しいでしょう。元技術委員長として、その辺りが気になります」

 ──その大舞台に挑む日本代表、そしてピッチに立てれば代表キャリアの集大成になるであろう遠藤への期待は?

「前回越えられなかったベスト16の壁を突破して、最高の景色を見てほしいという思いはもちろんあります。航についても、本大会に行けるのがベストです。彼もいつかは現役を退く時が来るでしょうが、いずれは日本サッカー界の要人になる人材です。マネージメント側に進むのか、指導者になるのか、それは分かりませんが、豊富な経験を日本サッカーのために生かしてほしいと願っています」

(聞き手=元川悦子/サッカージャーナリスト、絹見誠司/日刊ゲンダイ

▽えんどう・わたる 1993年2月9日生まれ、33歳。神奈川・横浜市出身。南戸塚中サッカー部からJ湘南ユース。2010年にJデビュー。2015年に浦和に移籍。18年にベルギー1部シントトロイデン、2019年にシュトゥットガルトに引き抜かれた。2023年に英プレミアの強豪リバプール入りした。2015年7月に日本代表初選出。2016年リオ五輪代表として3試合出場。2018年ロシア大会メンバー入りするも出場機会なし。2022年カタール大会では全4試合に出場して16強入りの原動になった。

▽そりまち・やすはる 1964年3月8日生まれ、62歳。埼玉・浦和市出身。静岡・清水東高で全国高校サッカー選手権優勝。慶応大卒業後に全日空に入社。全日空の社員選手から1994年にJ湘南とプロ契約を交わしてプレーした。97年に現役引退後は新潟で監督。2008年北京五輪監督を務めた後は湘南、松本で采配をふるった。2020年にJFA技術委員会の委員長に就任。2024年4月からJ清水のGM。

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