アカデミー賞長編アニメーション部門で注目「アメリと雨の物語」が描くニッポンカルチャー

公開日: 更新日:

 日本で生まれた外交官の娘アメリは、自分を“神”だと信じて、魔法のような世界に生きる多感な女の子。彼女の一家はカシマさんという厳格な日本女性が大家をしている、広大な日本家屋の離れで暮らしている。アメリはこの家の家政婦に雇われたニシオさんに懐いて、彼女から日本の妖怪の話や自分の名前と語感が似ている「雨」という漢字を教わり、日本の文化に興味を持っていく。アメリにとっては日々の出来事がすべて冒険であり、新たな発見の連続。「となりのトトロ」(88)のメイを彷彿とさせる、好奇心の塊のようなアメリに魅せられる観客は多いはずだ。

 一方でカシマさんは戦争中の爆撃で家族を亡くしていて、外国人に優しく接するニシオさんにいい印象を持っていない。やがてアメリが大好きだったベルギー人のおばあちゃんが亡くなり、ニシオさんの家族も戦争で死んでいると知った彼女は、死者を弔う精霊流しをニシオさんと行い、人が死ぬということの意味を知っていく。戦争の記憶が残る60年代の日本人のメンタリティーも織り込みながら、アメリの成長をみずみずしいタッチで描いた作品だ。


 フランスでは近年、夢枕獏・作、谷口ジロー・画による漫画『神々の山嶺』が21年にパトリック・インバート監督によってアニメーション化され、この作品は第47回セザール賞アニメーション映画賞を受賞した。作品のかなりの部分が日本を舞台にしているこの映画に、美術スタッフとして参加したエディン・ノエルが今回の美術監督を務めている。それだけに美しい日本庭園や神社、アメリ一家が暮らす日本家屋の調度品に至るまで、その描き方には違和感がない。また60年代の日本を象徴する曲として、ザ・ピーナッツの「恋のバカンス」が挿入されているのも気の利いたチョイスだ。日本をそのまま描いたアニメーションが、海外で高評価を得ている現状を見ると、日本文化のグローバル化が加速度的に進んでいるのがわかる。その流れから生まれた映画として、「アメリと雨の物語」はすべての世代におススメできる秀作だ。

(金澤誠/映画ライター)

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    和久田麻由子の日テレ新番組は厳しい船出…《NHKだったから良かっただけのアナ》とガッカリの声

  2. 2

    国会前デモ「ごっこ遊び」揶揄で炎上の高市チルドレン門寛子議員 被害者ヅラで取材依頼書さらし“火に油”

  3. 3

    Adoの初“顔出し”が話題 ミステリアス歌手の限界と20年非公表の「GRe4N BOYZ」との違い

  4. 4

    TBS「テレビ×ミセス」のスマスマ化で旧ジャニ不要論が加速 “体を張るイケメン”の専売特許は過去のもの

  5. 5

    目黒蓮のGW映画もヒット確実も…新「スタート社の顔」に潜む “唯一の落とし穴”

  1. 6

    「自転車1メートル規制」で渋滞発生 道路交通法改正とどう付き合うべきか

  2. 7

    中居正広氏の公式サイト継続で飛び交う「引退撤回説」 それでも復帰は絶望的と言われる根拠

  3. 8

    嵐の大野智と相葉雅紀、二宮和也が通信制高校で学んだそれぞれの事情

  4. 9

    宮舘涼太は熱愛報道、渡辺翔太はSNS炎上、目黒蓮は不在…それでもSnow Manの勢いが落ちない3つの強み

  5. 10

    佐々木朗希に芽生えた“かなりの危機感”…意固地も緩和?マイナー落ち、トレード放出に「ヤバいです」