渡辺剛〈前編〉高校時代の大挫折 「つまらないミス」で将来への絶好機を棒に振った(山梨学院大付高元監督・吉永一明)

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DF渡辺剛(オランダ1部フェイエノールト/29歳)

 冨安健洋板倉滉(ともにアヤックス)ら森保ジャパン初期から最終ラインを担ってきたキープレーヤーが相次いで負傷離脱したタイミングで29歳DFの存在感が増している。25年のブラジル、26年のイングランド撃破の立役者となった渡辺剛である。現在は中国東北部でU15世代の指導に携わるベテラン指導者に聞いた。今回はその【前編】。

  ◇  ◇  ◇
 
 ──山梨学院高に来ることになった経緯を。

「山梨学院にはFC東京U-15出身者が過去にも何人か来ているんですが、剛もその流れで夏休みに練習参加してくれました。11対11のゲームで中盤に入って、『声変わりもしていない高い声でよく指示を出しているな』と感じたのが最初の印象です。その時、横で見ていた当時FC東京U-15むさし監督だった山口隆文さん(現JFAアカデミー福島総括)が『彼がいると練習が盛り上がるんだよ』と言うんです。雰囲気を明るくしてくれるところはポジティブだなと感じましたね」

 ──選手としてはどうでしたか?

「本当に小さくて目を引くような選手ではなかったですけど、僕は前向きな選手が好きなんです。セレクションで沢山の人間がいる中、自己表現をするのは簡単そうで簡単じゃない。『この子はうまくなるんじゃないか』と直感しました」

 ──越境入学後は?

「寮生活を送りながら、1年生チームで活動していましたが、1年間で身長が20cm伸びて急に大きくなったんです。それに伴ってヘディング力も向上していきました。ヘディングに関しては、横森巧総監督(現山梨学院大総監督兼務)がヘディングに強いこだわりを持っていたので、よく捕まえられてレクチャーを受けていましたね。総監督は『ヘディングが勝負の命運を分ける』くらいの持論を持っていましたし、自分自身がDFだったので、ジャンプのタイミングやボールの当て方に至るまで、こと細かく指導されていました」

 ──FC今治の塚田雄二監督らを育てた高校サッカーの名将との出会いが大きなポイントになったのですね。

「それはあると思います。それを受けて、剛が備品のペンデルボールを吊るしてヘディングの自主練をする姿をよく見かけました。3月のイングランド戦でも終盤に出てきたマグワイア(マンU)と激しいヘディングの競り合いを演じていましたが、そういうプレーができるのも、高校時代からの積み重ねでしょう」

 ──中盤から最終ラインに下がったのは2年の時ですか?

「はい。僕なりに彼の特徴を見極めていたんですが、360度を幅広く見ながらプレーするボランチよりも、180度の視野に集中できるCBに固定した方が良さが出るんじゃないか、という判断がありました。今になるとそのコンバートは正しかったのかなと思います。そこからAチームに入れて使うようになりました。プロになった選手はだいたい2年から試合に出しているケースが多いですね」

 ──高3では絶対的主力へと成長しました。

「そうですね。CBは剛と大野佑哉(長野)がコンビを組んでいました。2人ともポテンシャルは高かったですが、まだまだ子供でメンタル的に浮き沈みがあった。どうやって自分自身をコントロールするべきか──というところに苦心したと思いますけど、周りが大人だったことでだいぶ助けられたのかなと感じます」

「Jリーグからのオファーはなかった」

 ──当時の印象的なエピソードはありますか?

「高3の高校総体ですね。地元・山梨開催で注目度が高まる中、初戦は静岡の東海大翔洋高校との対戦でした。勝利して次は増山朝陽選手(町田)や中島賢星(山口)らタレントのいる東福岡との対戦だった。『そこがヤマだな』という話をして大会に入りました。初戦で首尾よくリードして、試合が終わりそうだった終盤、剛が遅延行為で2枚目のイエローカードをもらって退場したんです。本当につまらないミスで東福岡戦に出られなくなった。結果的に山梨学院は2回戦を0-1で落とし、敗退する羽目になりました。この東福岡戦はスカウトも数多く来ていましたし、そこで頑張っていれば将来への道が見えてくる可能性もあった。剛はそれを逃した挙げ句、チームにも迷惑をかけることになったんです。みんなの前で涙を見せるようなことはなかったけど、悔しさは募ったはずです」

 ──彼にとっては高校時代最大の挫折でしょう。

「はい。自分が欠場した試合で同級生のCBが奮闘する姿を見て『もう1回、ここで頑張らないといけない』と痛感したはずです。高校総体でアピールの機会を逃したこともあり、その時点でJリーグからのオファーはありませんでした。地元の甲府の練習にも参加させてもらいましたけど、社長兼GMだった佐久間悟さんは『大学へ行かせた方がいい』と判断したと聞きました。僕も人間的に未熟なところを感じていたので、それを理解してくれるチームがなければ、大学へ行った方がいいと考えていたので結果的に中央大学が取ってくれたのはよかった。進路がすんなり決まってホッとした記憶があります」

【後編】につづく

(聞き手=元川悦子/サッカージャーナリスト)

▽わたなべ・つよし:1997年2月5日生まれ。埼玉・越谷市出身。J・FC東京下部組織から山梨学院大付属高に進学。MFからCBにコンバートされて頭角を現し、中央大を経て19年にFC東京入り。21年にベルギー1部コルトレイクに移籍。同1部ヘントを経て25年7月、オランダ1部の名門フェイエノールトに引き抜かれた。19年12月に日本代表初招集・初出場。3月の英国遠征2試合に出場した。身長186cm・体重78kg。

▽よしなが・かずあき:1968年3月17日生まれ。福岡・北九州市出身。福岡大卒業後、J鳥栖のコーチなど歴任。09年から山梨学院大付属高サッカー部コーチ。10年から監督。16年にJ甲府コーチ。17年から新潟シンガポール監督。J新潟の監督、新型シンガポールのGM、監督を経て現在は中国サッカー協会大連地区トレーニングセンターのトレセンダイレクター。

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