【SNSから子どもを守れ】デジタル化で悪化する子どもの健康やコミュニケーション力
「デジタル教科書のリスク」加藤やすこ著
世界中に広がり始めたSNS規制論。子どもへの悪影響の懸念が一気に高まっているのだ。
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「デジタル教科書のリスク」加藤やすこ著
2010年ごろから世界の先進国で始まったのが「デジタル教科書」。日本も15年前に文科省が「教育の情報化ビジョン」を発表した。しかし今、教育のデジタル化は子どもたちの健康にも影響があるといわれ、専門家の調査でも結果が出ている。目の疲れや肩こりのほか、疲労感やイライラの症状がある。デジタル化で日本に先んじた韓国では姿勢の悪化やコミュニケーションの減少、紙の教科書にないストレスなどが指摘されている。
化学物質や電磁波の過敏症についてくわしい環境ジャーナリストの著者は一問一答形式でさまざまな問題についての情報と考察を深めていく。多くのデータや専門家の議論を参照し、学校でのデジタル機器の利用に規制や制限を加えるべきだという。現に10年から子どもたちにパソコンを1台ずつ普及させてきたスウェーデンでは23年から紙の教科書に戻す政策を実施している。特に幼い学童ではできるだけデジタル画面を見る「スクリーンタイム」を短くするように指導しているという。 (緑風出版 2200円)
「シン・SNS論テック・ファシズムの支配に、どう立ち向かうか?」米田 智彦著
「シン・SNS論テック・ファシズムの支配に、どう立ち向かうか?」米田 智彦著
作家でコンテンツディレクター、さまざまなネット系雑誌の編集長なども経験した著者は、昨年の正月、知人の多くが「もうSNSやってないんですよ」と言ったことにショックを受けた。ひさしぶりにX(旧ツイッター)を見ると陰謀論や他人への中傷、罵詈雑言にあふれて驚愕し、かつてネットで味わった楽しさや冒険心が消えうせたような喪失感を味わい、それをきっかけに書かれたのが本書だという。ネット業界をリードした巨大テクノロジー企業(ビッグテック)はいまや「監視資本主義」の巣窟になった。SNS運営企業はユーザーの購買行動や投稿傾向をつぶさに観察し、位置情報や個人情報を「資源」として利用するのだ。
他方、ユーザーの側では他人のSNSをのぞき見て匿名で投稿や一時的な交渉を繰り返すだけで「誰ともつながらずに生きていける」という状態が生まれる。
さらに著者は生成AIの登場によってSNSもいずれAI基盤の「フロントエンド」(ユーザー側のインターフェース)に過ぎなくなるという。人間は情報流通の主役ではなくなる。著者のような立場の人間がSNS規制に部分的にせよ賛成するのがまさに現代というものだろう。 (技術評論社 1980円)
「子どものSNS禁止より、大人のX規制が必要な理由」岡嶋裕史著
「子どものSNS禁止より、大人のX規制が必要な理由」岡嶋裕史著
著者はネット黎明期からの熱心なユーザー。10代から20代にかけては2ちゃんねるなどに熱心で、いまでは中央大の情報学の教授だ。その人がネット規制を主張するのはなぜか。著者はSNSの本質を「つながる」というより「嫌な奴を切るサービス」という。同じ傾向の仲間とだけつながるわけだ。それゆえ仲間内のイベントもトラブルも外部には可視化されにくい。
しかしXは違う。
それは「伝播ネットワーク」であらゆるものをつなげる。また怒りなどのネガティブな感情で人の気を惹く(アテンション)。
ゆえに人間関係の維持(リテンション)に重きを置くSNSよりも危険だ、というわけだ。それゆえ著者は規制はSNSに対してではなく、Xなどの拡散系サービスに対してのみ行うことに「消極的賛成」という。対象は子どもに絞るのではなく、「むしろ大人を保護しなければ」ならないというのだ。
著者は現在のネットを「拡散系」と「閉鎖系」に分け、両者に単一の規制をかけることに反対する。
専門家たちのより深い議論に期待したい。 (光文社 990円)



















