「海辺の週刊大衆」せきしろ著
「僕」の憧れの死因ベスト10のひとつは、「車にひかれそうな子犬を助けるために車道に飛び出し、身をていして守るが自分は死んでしまう」というシチュエーションなのだが、残念ながら、ここには子犬がいない。なぜなら、乗っていた船が難破して、気がついたらひとりで無人島に流れ着いていたからだ。
砂浜に座る僕の前には一緒に流れ着いたと思われる「週刊大衆」が1冊だけある。暗記するほど隅から隅まで読んだ僕は、雑誌を砂浜に立ててビーチフラッグのように素早く手で取ってみる。脳裏にはギャラリーの大歓声の中、「ビーチ週刊大衆」に興じる参加者たちの姿が浮かぶ。
1冊の週刊誌をめぐり妄想が妄想を呼び、止まらなくなる「何も起こらない」サバイバル小説。(双葉社 583円+税)