「クネレルのサマーキャンプ」エトガル・ケレット著 母袋夏生訳
ハイムは自殺して2日後に、自殺者だけが集まる世界で「ピッツェリア・カミカゼ」というチェーン店の仕事を見つけた。ある日、スーパー・デリにビールを仕入れに行くと、いちばん会いたくないやつに会った。生前、アパートをシェアしていたツィキだ。見なかったふりをしたが、向こうから声をかけられた。ハイムと同じように自殺したのだが、アパートの3階から飛び降りたら運悪く生け垣と隣家の車の間に引っかかって、往生するのに時間がかかったという。
ツィキは自殺は伝染すると言い、ハイムの葬式の1カ月後にエルガが死んだと告げた。ハイムはここに来てから初めて涙がこぼれ落ちるのを感じた。(表題作)
死後の奇妙な世界を描いた表題作ほか30の中短編。
(河出書房新社 1950円+税)