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井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

古書ますく堂(大阪・阿倍野)靴を脱いで本だらけのおうちにお邪魔する感覚

公開日: 更新日:

 8年ほど前、取材させてもらったことがある。池袋でゆるゆると営まれていた、あの「古書ますく堂」さんが大阪へ移転したという噂を聞きつけ、偵察がてら訪問した。迷わず到着できたのは、スマホの地図のおかげ。

 小住宅が並ぶ路地の一軒に黄色い看板が上がっていた。靴を脱いで、本だらけのおうちにお邪魔する感覚で「こんにちは」。2間続きの和室の最奥にいた店主・増田啓子さんが「あの井上さん?」と覚えていてくださって、うれしいなー。

「コロナ禍に池袋の店、立ち退きになって。大家さんが、移転費用を全額出してくれるというので、思い切って来ちゃった」

和室3室に2万冊!近代詩と本屋関係の本に強い“ガチ本屋”

 確か、広島のご出身。大阪に地縁おありで?

「いや全然(笑)。学校が神戸だったので、神戸で探したけど、高くて……」

 そんなやりとり中に「あ、そこ空けてあげて」と増田さん。あら失礼。左手にもう1部屋あった。そこで静かに本を選んでらした推定30代女性客が現れ、2冊をお買い上げに。

「SNSで知って、ときどき来てます」

 そういう人多い?

「いやいや、お客さんあんまり来ないし」と、増田さん、相変わらず飄々と。

 3室合計30平方メートルに約2万冊。「強いのは、文学。とりわけ近代詩と、本屋関係の本」とのことで、確かに。両分野とも、そんじょそこらの大型書店以上の冊数あり。しかも刊行年の古いものも新しいものも仲良く並んでいる。

 私は、詩では茨木のり子、新川和江、立原道造、室生犀星に反応しつつ、草野心平著「村山槐多」を買う。

 本屋関係では、中村真一郎「読書のよろこび」を見つけて「わー」と心で叫んでいると、「これも懐かしい、いい本」と増田さんが90年代刊の「女たちの本屋」「菊地君の本屋」「物語のある本屋」を案内してくれる。そして入り口近くには、「広島出身としては絶対に外せない」と、「はだしのゲン」もたっぷり、被差別部落関係の本も。

 古書ますく堂にあるのは、本気でガツガツ読みたい本ばかり。ガチ中華ならぬ「ガチ本屋」だと思った。

◆大阪市阿倍野区共立通1-4-26/℡090.3747.2989/地下鉄谷町線阿倍野駅から徒歩7分/正午~18時/不定休

ウチの推し本

「ほんやく日和 19-20世紀女性作家作品集vol.1」

「同人誌も多数扱っていますが、これも『置いてください』と、作っている方が持ち込まれた同人誌。海外の女性作家の、翻訳されていなかった短編を自分たちで翻訳しているんですね。もうすぐ5号が出ます。1号は、モンゴメリーの『不法侵入』、カークウッド文、M・T・ロス絵の『動物の子ども図鑑』など最高。私、海外ものをあまり読んでこなかったのに、今、これにはまってるんですよ~」(売値800円)

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