「おっぱいマンション改修争議」原田ひ香著
都内の一等地にある、今は亡き天才建築家小宮山吾朗が設計したマンションの改修計画が持ち上がった。1960年ごろから70年代にはやったメタボリズムを象徴する「細胞」を積み上げたような建物で、最上階だけ、2つの「細胞」が円すい形で横に並んで突き出ていて、まるで女性のバストのようだと、「おっぱいマンション」と呼ばれていた。この一種の歴史的建造物を残せという声がある一方で、当時、夢の素材とまでいわれたアスベストが多用され、デザイン優先のため雨どいがなく、湿気に悩まされるという重大な欠陥を抱えていた。
本書は、その建築家の娘、学生運動あがりの引退した教師、元女優ら、マンションの住民たちの人生を巻き込んだ改修争議の顛末を描く小説。果たして住民会議での結論はいかに。
(新潮社 1400円+税)