著者のコラム一覧
北島純映画評論家

映画評論家。社会構想大学院大学教授。東京大学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹を兼務。政治映画、北欧映画に詳しい。

映画「バービー」が興収2000億円突破! それでも日本でイマイチ当たらなかったワケ

公開日: 更新日:

■円熟したエンターテインメント文化が希薄

「玩具の擬人化映画」はともすれば子供向け夢物語に陥りがちだ。しかしガーウィグ監督は、バービーによる「本当の自分探し」譚を主軸に据えながらも、見る人がそれぞれの問題関心に応じてメッセージを受け取ることができるように入念に物語を構築した。

 人種やイスラムの問題は回避される一方で、ジェンダーに焦点をあて、マンスプレイニングに苛立っていた人が快哉を叫び、ポリティカル・コレクトネスに疲れていた人が癒やしを感じるような多面性を打ち出した。玉虫色で終わらないのは、「フェミニズムによる批判」と「フェミニズムに対する批判」を共に取り込むような包括性を保ちながら、「人生を生きるとはどういうことなのか」という普遍的なテーマに物語を収斂(しゅうれん)させているからだ。

 歌あり踊りありのエンターテインメント性の高さ、グレタ・ガーウィグ一流のユーモアとジョーク、バランス感覚、人間性への深い洞察がこの物語の重層性を支えている。それゆえ本作はジェンダー平等の最前線たる欧米だけでなく、中南米や中国を含めた世界中でヒットしているのだ。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    横浜・村田監督が3年前のパワハラ騒動を語る「選手が『気にしないで行きましょう』と…」

  2. 2

    文春が報じた中居正広「性暴力」の全貌…守秘義務の情報がなぜこうも都合よく漏れるのか?

  3. 3

    マツコが股関節亜脱臼でレギュラー番組欠席…原因はやはりインドアでの“自堕落”な「動かない」生活か

  4. 4

    松井秀喜氏タジタジ、岡本和真も困惑…長嶋茂雄さん追悼試合のウラで巨人重鎮OBが“異例の要請”

  5. 5

    巨人・田中将大と“魔改造コーチ”の間に微妙な空気…甘言ささやく桑田二軍監督へ乗り換えていた

  1. 6

    5億円豪邸も…岡田准一は“マスオさん状態”になる可能性

  2. 7

    小泉進次郎氏8.15“朝イチ靖国参拝”は完全裏目…保守すり寄りパフォーマンスへの落胆と今後の懸念

  3. 8

    渡邊渚“初グラビア写真集”で「ひしゃげたバスト」大胆披露…評論家も思わず凝視

  4. 9

    「石破おろし」攻防いよいよ本格化…19日に自民選管初会合→総裁選前倒し検討開始も、国民不在は変わらず

  5. 10

    大の里&豊昇龍は“金星の使者”…両横綱の体たらくで出費かさみ相撲協会は戦々恐々