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北島純映画評論家

映画評論家。社会構想大学院大学教授。東京大学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹を兼務。政治映画、北欧映画に詳しい。

映画「バービー」が興収2000億円突破! それでも日本でイマイチ当たらなかったワケ

公開日: 更新日:

■円熟したエンターテインメント文化が希薄

「玩具の擬人化映画」はともすれば子供向け夢物語に陥りがちだ。しかしガーウィグ監督は、バービーによる「本当の自分探し」譚を主軸に据えながらも、見る人がそれぞれの問題関心に応じてメッセージを受け取ることができるように入念に物語を構築した。

 人種やイスラムの問題は回避される一方で、ジェンダーに焦点をあて、マンスプレイニングに苛立っていた人が快哉を叫び、ポリティカル・コレクトネスに疲れていた人が癒やしを感じるような多面性を打ち出した。玉虫色で終わらないのは、「フェミニズムによる批判」と「フェミニズムに対する批判」を共に取り込むような包括性を保ちながら、「人生を生きるとはどういうことなのか」という普遍的なテーマに物語を収斂(しゅうれん)させているからだ。

 歌あり踊りありのエンターテインメント性の高さ、グレタ・ガーウィグ一流のユーモアとジョーク、バランス感覚、人間性への深い洞察がこの物語の重層性を支えている。それゆえ本作はジェンダー平等の最前線たる欧米だけでなく、中南米や中国を含めた世界中でヒットしているのだ。

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