生成AIには「その患者特有の情報」は見えていない
「薬のこと、ChatGPTで調べました」
最近、患者さんからもそんな声を聞くことが増えてきました。たしかに便利です。副作用、飲み方、飲み合わせ……たいていのことは数秒で答えてくれます。でも、それはあくまで「平均的な知識」であり、「あなたの体調や状況を見て判断した情報」ではありません。
たとえば、「この薬とサプリ、一緒に飲んで大丈夫ですか?」という質問。生成AIは一般論として「併用注意」や「特に問題ない」と答えるかもしれません。でも、その人の腎機能が低下していたり、他にも3種類の薬を服用していたりしたら……? AIには依頼者の血液検査の結果も、表情の変化も、年齢や体重、副作用の微妙な訴えなどすべて見えないのです。
また、情報の真偽の問題もあります。生成AIは、事実ではないもっともらしいアイデアを生成する「幻覚(hallucination)」を起こす可能性が知られています。「もっともらしい文章」を作るのが得意な分、あいまいな情報でも自信満々に答えることもあるのです。
特に処方薬は、添付文書や医療用の最新情報に基づく判断が必要ですが、生成AIはそれを常に正確に提供できるわけではありません。薬というのは、人に合わせて調製していくものです。副作用の出方や効き方も、十人十色です。だからこそ、薬剤師が患者さんの顔を見て、声を聞いて、その人の背景を知ったうえでアドバイスすることが大切なのです。