著者のコラム一覧
荒川隆之薬剤師

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

生成AIには「その患者特有の情報」は見えていない

公開日: 更新日:

「薬のこと、ChatGPTで調べました」

 最近、患者さんからもそんな声を聞くことが増えてきました。たしかに便利です。副作用、飲み方、飲み合わせ……たいていのことは数秒で答えてくれます。でも、それはあくまで「平均的な知識」であり、「あなたの体調や状況を見て判断した情報」ではありません。

 たとえば、「この薬とサプリ、一緒に飲んで大丈夫ですか?」という質問。生成AIは一般論として「併用注意」や「特に問題ない」と答えるかもしれません。でも、その人の腎機能が低下していたり、他にも3種類の薬を服用していたりしたら……? AIには依頼者の血液検査の結果も、表情の変化も、年齢や体重、副作用の微妙な訴えなどすべて見えないのです。

 また、情報の真偽の問題もあります。生成AIは、事実ではないもっともらしいアイデアを生成する「幻覚(hallucination)」を起こす可能性が知られています。「もっともらしい文章」を作るのが得意な分、あいまいな情報でも自信満々に答えることもあるのです。


 特に処方薬は、添付文書や医療用の最新情報に基づく判断が必要ですが、生成AIはそれを常に正確に提供できるわけではありません。薬というのは、人に合わせて調製していくものです。副作用の出方や効き方も、十人十色です。だからこそ、薬剤師が患者さんの顔を見て、声を聞いて、その人の背景を知ったうえでアドバイスすることが大切なのです。

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