「あなたのためよ」に潰されないで。“優しさの押し付け”と戦うために、私が仕掛けた小さな反撃

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コクハク

「喜ばれることをしている」という無自覚な押しつけ

 この時期になると、毎年思い出すのは姑のこと。実は、新婚当初、私たちは二世帯住宅で姑と同居していました。とあることがきっかけで別居することになったのですが、心の底から「別れてよかった」と思っています。

 あのまま一緒に住み続けていたら──。そう考えるだけでゾッとするほどです。

【解消されない夫婦のモヤモヤ】

 姑はいわゆる“プレゼント魔”でした。家庭用品、洋服、食べ物など、あらゆるものを大量に買っては「あなたのために」と押しつけてきました。それらはもちろん全て姑の好みなのは言うまでもありません。

 新婚当初から、家具やカーテン、寝具など、生活空間は“姑チョイス”で埋め尽くされていました。

「全然好みじゃないなぁ…」と思いながらも、「あなたはもう家族なんだから」と嬉しそうにしている姑に何も言えませんでした。

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嬉しくもないのに…

 ある日、私が自分で食器を買ったときも、姑は不機嫌そうな顔をされました。

「そんなの買わなくても、うちにあるものでいいのに」と。

 自分の好きな形や色の器を使って、ごはんを食べたいという、ささやかな願いさえ許されないのか?と悲しい気持ちになったのを今でも覚えています。

 ありがた迷惑とはよく言ったもので、 “良かれと思って”の行動ほど、断りづらく、厄介なものはありません。

 しかも、姑は「感謝されるのが当然」というスタンス。欲しくもないプレゼントに対してお礼を言わないといけないのは、なかなかしんどいものでした。

選ぶことを奪われる虚しさ

 姑の”プレゼント攻撃”は、私が第一子を出産したあと、さらに加速していきました。ベビー服、おもちゃ、ベビーカー、スタイ──。何でもかんでも姑が選び、買い与えてくるのです。

 たまに「どっちがいい?」と聞かれることもありましたが、私が選んだものとは別の方を「私はこっちがいいと思う!」と勧めてくるので、結局、私の意見は通りません。

 もちろん、何もかも与えてもらっていたわけではありませんでしたが、「自分の好きなものを選ぶ」というささやかな幸せは確実に奪われました。

 初めての育児、この子に似合う服はどんな色だろう? どんなおもちゃが好きかな? そんな風に、あれこれ悩みながら選ぶ時間をもう少し持ちたかったな、と今振り返ると感じるのです。贅沢な悩みかもしれませんが…。

 そんな生活を続けているうちに、自分の好きなものやしたいことを主張をするのをやめて、姑に迎合するようになっていきました。

小さな反撃

 私が最も困ったのは──姑が私の服まで買ってくることでした。姑が通うブティックで買ったという洋服。40歳も年上の彼女と私のセンスが一致するわけがありません。

 私が微妙な顔をしたのに気づいたのか、今度は大学生に人気のブランドで買ってくるようになりました。

 しかし、産後で体型が変わった私に、その服が合うはずもない。それらもすべてタンスの肥やしとなりました。

 さすがに、自分が着る服については黙って従えず、私は一切着ない、という方法で意思表示をしました。

 すると、少しずつプレゼント攻撃は減っていったのです。そのとき「嫌なことは、きちんと嫌と言わなければ、終わらない」と気づきました。

「自分の人生を自分で選ぶ」という当たり前の幸せ

 プレゼントしてもらうことで経済的な負担は少なく済みましたが、精神的な窮屈さはずっと感じていました。

 どんな食器で食べるか、どんな服を着て、どんなおもちゃを子どもに与えるか──。そんな小さな選択の積み重ねが、自分の“人生のかたち”をつくっていくのだと思います。

 姑との同居で、私はその自由を失っていました。選択を奪われるというのは、じんわりと精神を蝕んでいくものです。

 今は、自分で選び、自分で決める日常の中で、ようやく「自分の人生を生きている」と実感できるようになりました。

(豆木メイ/フリーライター)

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