「大阪のなぞ」橋爪紳也著
「大阪のなぞ」橋爪紳也著
明治時代後半、繊維業で栄えていた大阪は「東洋のマンチェスター」と呼ばれた。さらに川筋が網の目のように広がる美観からベネチアやパリにも例えられた。経済的繁栄を得て「大大阪」と呼ばれた昭和初期には、因習にとらわれず合理的に考え実利を重んじるその都市性から、評論家の大宅壮一は大阪を「日本のアメリカ」と断定した。
経済都市として発展し、資本主義社会に適応した価値観や文化観が市民にも浸透した大阪では、現在に至るまでその「大阪イズム」が脈々と受け継がれてきた。
本書は、大阪城跡を利用した幻の「離宮」造営計画や、南海電鉄のシンボル「羽車」など、大阪のさまざまな謎を解き明かしながら、そこに大阪イズムの断片を見つける都市エッセー。
(河出書房新社 990円)