さや香、バッテリィズ…意外と多い「不仲コンビ」にグッとくる理由。仲良し芸人だけが正解なのか?

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コクハク

増える芸人の仲直り企画

 千鳥MC『相席食堂』(ABC/テレビ朝日系)の6月3日放送回にて、「カウンセリング相席」と称した、お笑いコンビ・流れ星の仲直り企画が放映されました。

 流れ星は、かつての人気番組『爆笑オンエアバトル』などで活躍し、近年でもTHE SECONDでノックアウトステージに進出(2023年、2024年)するなど、言わずと知れた結成25年の実力派漫才師。しかし、近年では不仲が取りざたされています。

『ゴッドタン』(テレビ東京系)や『水曜日のダウンタウン』(テレビ東京系)でも注目をあびたように、その一触即発ぶりはお笑いファンなら有名です。一時期よりは回復したといいますが、このオンエアでのヒリヒリぶりは千鳥の「待てぃ!」がなければ直視できないものでした。

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仲良し芸人が目立つが……不仲コンビは意外と多い

 かつては「コンビ仲の悪い芸人はかっこいい」という風潮がありました。しかし、さまぁ~ずやおぎやはぎ、サンドウィッチマンが出てきたあたりから、笑いに安心や明るい空気感を求める時代の流れもあって、「仲がいい方がいい」「仲良くすべき」といわれるようになってきました。

 昨今は、KOC王者のサルゴリラやTHE SECOND準優勝の囲碁将棋など、プライべートでも仲がいいことを公言する芸人さんも増えています。

 極めつけが、『水曜日のダウンタウン』で放映された“おぼんこぼん仲直り企画”。不仲なベテラン芸人が2年の時をかけて雪解けするその企画は、多くの視聴者や芸人の心を感動させました。



 そのせいなのでしょうか、流れ星のような不仲の芸人コンビが、逆に目立つようになってきたように思えます。

 他、不仲コンビとして思い浮かぶのは、ウエストランド、バイきんぐ、実はプライベートでは不仲なのがバッテリィズ、リアルなのがしずるやさや香などでしょうか。

急ごしらえの「仲直り企画」は痛々しい

 ただ、ウエストランドバイきんぐは上下関係がはっきりしており、避けられている方が特に何も感じてなさそうなのが関係性として見ていて気持ちいい不思議な所です。

 バッテリィズは4月19日(土)放送の「さんまのお笑い向上委員会」(フジテレビ系)で、ボケのエースがツッコミの寺家について性格が全く合わないとし、「寺家のこと嫌いです」と5年前に伝えていたことが明かされました。

 そしてさや香の不仲ぶりは、各バラエティ番組でネタにされるほど有名。しずるは先日放送された『にけつっ!』(ytv系 6月11日放送)でコンビ出演した際にも不仲をネタにトークを繰り広げていました。

 コンビ仲がいいことは、悪いことではありません。むしろその方がいいはず。

 ただ、今回の流れ星の『相席食堂』や、さや香が先輩芸人からさや香がコンビ仲について説教をうけている『ゴッドタン』、『アンタウォッチマン』などを見ていると、コンビ仲を無理に正そうとしなくてもよいのでは……と思うのです。おぼんこぼん企画では、じっくり時間をかけ、周囲の人を巻き込み、解散のリスクを背負いながら、仲直りに至りました。

 ただ、それができない場合の急ごしらえの仲直り企画は、見ていて痛々しいです。

 今回の流れ星の『相席食堂』は、結局多少の雪解けが見えた程度、さや香の『アンタウォッチマン』は、説教をしているサンドイッチマンの伊達さんの言っていることが正論すぎるがゆえに、ふたりは言葉少なに厳しい顔……。無理に他人が介入しても余計傷口が広がりそうな予感さえします。

不仲コンビならではのメリットもある

 実は、不仲コンビだからこそのメリットもあります。それは、個人個人の活動が捗ること。

 さや香を例に挙げると、石井さんは得意のダンスやゲーム関係の番組にソロで出演する機会が多くなっており、新山さんは『ロンドンハーツ』などでのいじられや、大阪教育大卒業の頭脳を生かし、クイズ番組によく出演しています。



 ふたりはそれらの番組にソロとして出ていても何も違和感がありません。番組に呼ぶ方も、セットで呼ばなければいけないというしがらみから解放され、番組が求める能力がある方をピンポイントでキャスティングできるという利点があるのではないでしょうか。

 それぞれの特技や特性ある場合、ピンの仕事で生きやすいのです。

不仲でも「実力は認め合っている」関係

 また、さや香のファンなら、ふたりが「実力は認め合っている」ことは十分知っています。

 例えば、2013年のM-1グランプリのファイナリスト紹介動画で、石井さんが新山さんのネタについて「去年より平均点が高い、マジおもろかった」とベタ褒めする発言をした際、新山さんが「ファンか!」「ハードル上げるな」などと悪態つきつつも内心は嬉しそうでした。

 ある番組でふたりきりでドライブをした際は、石井さんが仕事で新山さんに助けられたことに対し「ありがとう」と自然に伝えたことに動揺して(?)運転している新山さんが理由もなくウインカーを出したりと挙動不審になっていました。

 そんな、絆の片鱗が見え隠れする姿は、あからさまに仲がいいよりもグッときます。ウエストランドにしても、河本さんの結婚式での感動的なスピーチにファンは絆を感じているようです。(井口さんはそう思われるのを嫌がっていますが)

 つまり、不仲コンビは不仲コンビなりの関係性の味があり、ファンも十分楽しむことができているのです。

さらなる可能性を秘めている

 そして、不仲コンビの一番の利点が、今後の飛躍の伸びしろがあることです。

 アンタッチャブルも実力派の中堅芸人として一時期バラバラの活動をしている時代でも個々に活躍していましたが、コンビ関係復活によってレギュラー番組も増え、頭打ちだと思われていた従来のステージから上がったように思えます。

 おぼんこぼん師匠だってそう。不仲なことで、今後万が一、仲が改善された以降の、さらに一皮むけるだろうというワクワク感があるのです。笑いの理論として有名なものに“緊張と緩和”という言葉があります。

 プライベートでコンビ仲が不仲状態にあるというのは、ある意味『緊張』の時間。しかし、その中でお笑い、つまり“緩和”が繰り広げられることで、意図せずとも“緊張と緩和”を体現し爆笑に繋がる可能性をもはらんでいます。

 前述の『アンタウォッチマン』でサンドイッチマンの伊達さんがさや香に言っていたように、不仲だとスタッフに嫌がられたり周りが気を使ってしまう部分はあるかもしれません。ただ、不仲コンビでも、ネタや芸が面白ければそれで十分です。

 たとえ平場がピリピリしていてもそれはそれでコンビの個性。誰もが仲いいという状況はどこか息苦しいと思ってしまう筆者としては、不仲コンビにある種の多様性を感じ、ホッとするのです。

(小政りょう/ライター)

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