「あの人の調べ方ときどき書棚探訪」平山亜佐子氏

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「あの人の調べ方ときどき書棚探訪」平山亜佐子著

 仕事上での報告書や社内報、あるいはSNSの発信など、日常生活で“書く”作業は意外に多いものだが、うまく資料を探し活用することに苦労する場合もある。

「調べもので使う本や雑誌は買うのか、図書館や資料館で借りるのか、インターネットで調べるのか、膨れ上がった蔵書はどうしているのか。多種多様な選択肢が増えていく中で、自分自身も年齢とともに手法も変えていく必要があるのかなと考えていたんです。では同業者たちはどんな方法を取っているんだろう。そんな疑問から取材がスタートしました」

 本書は、文筆家である著者が動画配信している番組「平山亜佐子のこちら文献調査局」内で、作家やライター、研究者、編集者らに情報収集の方法や整理・活用のコツを聞き、その一部を一冊にまとめたものである。

 たとえば、東京科学大学教授で文筆家の山本貴光さんの場合は、何百年もの歴史を相手に多言語の資料に接することが多い。著書の「世界を変えた書物」で、世界的に貴重な本の数々を解説するにあたり、まず原典を調べ、それから関係する研究論文や2次文献も集めて比べた。調べた資料は、1冊ごとに1フォルダーを作り、論文のリンクとデータを全部入れて管理。論文は全てプリントアウトして保管する。

 また、日常的に調べものの際には、エクセルに使用した本の言語や刊行年、分類、ネットで見つけたものはリンクを入力している。こうすることで、何を調べたときにどう活用したかが整理できるのだ。

「山本さんの1冊ごとに1フォルダー整理方法は、実際やってみるとあとで比較しやすかったですね。データだけでなく紙でも保管しておくと、パッと見られるので意外に便利です。私も紙の資料はA4サイズの100均のプラケースに作品別に保管するようにしています」

 現代の歴史や文化を取り上げることが多いライターの速水健朗さんは、作品のテーマによって調べ方も違ってくるという。たとえば1981年の三浦和義のロス疑惑について調べたときは、新聞や週刊誌の記事ではなく、1次資料を使って書かれた2次資料のノンフィクション作品を参考にした。さらに衣食住や教育、レジャー、交通など細かくジャンル分けしている昭和・平成の家庭史年表で、当時の世相や生活、時代背景を固めた。

「取材をして分かったのは、ジャンルやテーマが違っても資料をデジタル化しておくことが共通点であり、マストでした。同時にネットの情報だけでなく紙媒体への信頼も残っていると感じました」

 本書では、ほかにもクリエーターたちがどのように蔵書を収納しているのかをルポ。蔵書収納のため自宅の隣家を購入したり、膨大な蔵書を自炊(紙の本を電子化する)してスマートフォン1台に入れてしまったなど、驚きの保管方法を紹介している。

「時間やコストをかけて調べたことはテーマを深め自分の中に残ります。デジタルの検索や保管も欠かせないことですが、現物の紙媒体、本にも電子書籍などにはない情報があります。それは本の重さや装丁、表紙のデザイン、紙の古さ・汚れなどから伝わってくるものです。デジタルも紙媒体も工夫して利用するのがいいですね」 (笠間書院 2530円)

▽平山亜佐子(ひらやま・あさこ) 1970年、兵庫県生まれ。デザイン会社勤務の後、フリーランスのデザイナーを経て、文筆家。戦前文化、教科書に載らない女性の調査を得意とする。「明治大正昭和 化け込み婦人記者奮闘記」「問題の女 本荘幽蘭伝」など著書多数。

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