「秘す歌留多」知野みさき著
「秘す歌留多」知野みさき著
上絵師の律は、ようやくつわりがおさまり、仕事もできるようになった。そんな中、仕事場にしている長屋の隣人で手習い指南所の師匠・今井から、仮名を教えるためのいろは歌留多を描いて欲しいと頼まれる。今使っている歌留多は、律が今井の指南所に通い始めたころ、父親で上絵師の師匠だった伊三郎が描いたものだった。聞くと、「い」の取り札がなくなったという。
数日後の夕刻、12歳の聡太が今井の長屋を訪ねてくる。聡太の告白によると、「い」の取り札が破れていることに気づき、直そうと家に持ち帰ったが、そのまま遊びに出かけ川で転んで駄目にしてしまい捨てたという。今井は、善意をほめながらも、聡太が嘘をついていることを見破る。
人気時代小説「上絵師律の似面絵帖」シリーズ第11弾。 (光文社 770円)