「米と小麦の戦後史」高嶋光雪著
「米と小麦の戦後史」高嶋光雪著
昨年からコメ不足が社会問題化しているが、半世紀前の日本ではコメ余りが深刻だった。1人当たりの米の消費量が戦前の年間135キロから85キロ(当時)まで激減。
一方で戦前1人当たり8.5キロだった小麦の消費量は4倍の32キロまで増大した。実は、日本人の食生活が急速に洋風化したのは、膨大な余剰小麦を抱えたアメリカによる戦略が要因だという。
昭和31~36年に大型バスで全国2万会場を巡回して実演講習をしながら粉食を奨励した「キッチンカー」事業をはじめ、学校給食の拡充、パン産業の育成などは、米政府の資金援助を受けたアメリカ西部小麦連合会の市場開拓プロジェクトの一環だった。
本書は、関係者の取材や資料から、そうした戦後の知られざる食糧史を明らかにするルポ。 (筑摩書房 1430円)