「極北の海獣」イーダ・トゥルペイネン著、古市真由美訳
「極北の海獣」イーダ・トゥルペイネン著、古市真由美訳
博物学者であり神学博士でもあるゲオルク・ヴィルヘルム・シュテラーが、大北方探検と呼ばれる探検に参加したのは、ある動物のためだった。体長140センチ、赤みがかった体毛で覆われ、ぴんと立った犬のような耳とぎょろりとした目、長く垂れ下がるひげを持つ。子どものように跳ね回り、水に潜って海藻をくわえて浮かび上がったかと思うと、それを放りなげて歯で捉える。
図書館に埋もれている生物をすべて知っているシュテラーも知らない動物だった。ベッドに入ったとき、彼はそれがゲスナーの「動物誌」に出てくる「デンマークの海猿」だと気づいた。
ステラーカイギュウを追う人びとの3世紀にわたる冒険譚。
(河出書房新社 2970円)