「日本灯台物語」岡克己著
「日本灯台物語」岡克己著
四方を海に囲まれた日本には灯台が数多く存在する。しかし、近年、GPSなどのハイテク機器に本来の航路標識としての役割が取って代わられ、多くが実用性を失いつつあり、廃止や撤去の動きが進んでいる。だが、灯台は近代建築技術の歴史が詰まった貴重な海事文化遺産でもある。
本書は、国内に現存する貴重な灯台を美しい写真で紹介し、その魅力を伝えるビジュアル本。
日本で灯台が初点灯したのは1869(明治2)年2月、神奈川県の観音埼灯台だった。以来、明治期だけで約120基も建設されたが、そのうち67基が現存する。
建設当時の姿そのままに、今も航海の安全を守り、光を放ち続けるこれらの灯台から、まずは重要文化財に指定されている15基を紹介する。
そのひとつ「犬吠埼灯台」は、千葉県銚子市の太平洋を望む岬に立つ高さ31メートルの日本を代表する大灯台で、初点灯は1874(明治7)年。
全国に16基しかない上れる灯台のひとつで、99段のらせん階段を上れば、太平洋の雄大な絶景と、国内に5基しか現存していない第1等フレネルレンズに出合える。
同じく重要文化財指定の「角島灯台」(山口県)は、日本海側初の大型沿岸灯台。徳山産の荒磨き花崗切り石を石積みした無塗装の灯台で「日本の灯台の父」といわれる英国人技師リチャード・ヘンリー・ブラントンの最高傑作といわれる。
ほかにも、灯台のイメージを覆したビルディング形式の「釧路埼灯台」(北海道)や、断崖絶壁の上に立ちドラマや映画の舞台にも使われた「大瀬埼灯台」(長崎県福江島)など。北から南まで国内の灯台100基を網羅。
歴史のほか、アクセスや写真撮影に最適のポイントなども解説した親切編集で灯台ガイドの決定版。 (講談社 2420円)