著者のコラム一覧
若月澪子ルポライター

1975年生まれ。ジャーナスリト。大学卒業後、NHK高知放送局・NHK首都圏放送センターで有期雇用のキャスター、ディレクターとしてローカル放送の番組制作に携わる。結婚退職後に自殺予防団体の電話相談ボランティアを経験。育児のかたわらウェブライターとして借金苦や終活に関する取材・執筆を行う。生涯非正規労働者。ギグワーカーとしていろんな仕事を体験中。

「多死社会」に突入した「ゲット・ワイルド」な山谷は、超高齢化という「解けない愛のパズル」を抱いている

公開日: 更新日:

入店直後からずっと漂っている尿の臭い

「オレはね、分譲マンション持ってるんだよ。でも、ドヤがいいよ。ドヤに住んで、この店の人たちに会ってね」

 ここでは何が嘘で、何が本当かは重要ではない。

「デイサービスに週3回通っているよ。ヘルパーさんが部屋まで迎えに来てくれて、お風呂に入って、ごはんを食べて、また部屋まで送ってくれるよ」

 白い歯を見せて笑うと、顔全体にシワが広がった。71歳と言うが、筆者にはオヤジさんが80代に見えた。彼は足が不自由で、介護認定を受けているようだ。恐らくオムツをしているのだろう、さっきからずっと尿の臭いが漂っている。

「今、つらいことは何ですか?」と尋ねると「ないね」という返事。「今一番楽しいことは?」と聞くと、やはりゆっくりこう答えた。

「……ないね」

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