「読鉄全書」池内紀、松本典久編
世の中「撮鉄」「乗鉄」「録鉄」と鉄道ファンであふれている。ならば「読鉄」があってもいいのでは、という趣旨で編まれたのが本書だ。
書き下ろしを含めて、41人の人生の手だれが書いたものを、乗るたのしみ、鉄道に生きる、鉄道で見つけたもの、旅と人生の4つの章に分けて構成している。
例えば、阿川弘之氏の「にせ車掌の記・食堂車の思い出」。「一日駅長」のような形ばかりの名誉職ではなく、車掌の日常業務を行う本物のにせ車掌に氏は化けた。乗り込んだのは東京発神戸行きの寝台急行「銀河」。およそ12時間にわたる緊張、冷や汗、そしてささやかな喜びの瞬間がつづられていく。それぞれの人生の、それぞれの軌跡が汽笛の音とともにレールの上を走り去っていく。
(東京書籍 1900円+税)