鉄ちゃんでなくても絶対に面白く読める本特集

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 未就学児から後期高齢者まで、男女年齢問わず増えているといわれるのが鉄道ファン。狭い国土の中で、縦横無尽に近い鉄道網を誇る日本ならではの現象なのかもしれない。鉄ちゃんはもちろん、駅や路線すらあやふやな鉄道初心者でも、ちょっとだけ博識になれる本を紹介しよう。

 目黒駅なのに所在地は品川区、南新宿駅なのに所在地は渋谷区、品川区にはない品川駅。これいかに?

 駅名と地名あるいは所在地の不一致は、全国各地に点在するようだ。その背景には、やむにやまれぬ事情や切実な思い、肩透かしをくらうような顛末も秘められているという。

 イチ押しのおすすめは、そんな全国各地のワケアリ駅名を根気よく調べ上げた「駅名・地名不一致の事典」(東京堂出版 2000円+税)だ。

 著者は地図・地理研究家で、鉄道に関する著書も多数執筆している浅井建爾氏。よくぞここまで、と感嘆するほどの緻密な作業だ。地方別・路線名別に調べ上げた「名称不一致」の駅がざっと700以上。その中身を一部紹介しよう。

 まずは、知らないとうっかり予定が狂う危険性をはらむ駅である。福島県の会津鉄道会津線「会津高原尾瀬口駅」は、尾瀬まで駅から数十キロも離れている。鹿児島県のJR肥薩線「霧島温泉駅」にも要注意。駅の周辺に温泉街はなく、温泉は十数キロも離れているという。また、広島県のJR芸備線「比婆山駅」は、比婆山への最寄り駅にあらず。山頂までは十数キロも離れているそうだ。

 施設の移転や行政区画の変更、市町村合併でやむなく別名に、というケースも多い。古くからの地名が消滅してしまう寂しさは否めないが、地元を思う気持ちがあふれる駅もある。

 山梨県の富士急行大月線「寿駅」は、もともと地名の「暮地駅」だった。だが、字面が「墓地」に似ているため、1981年に縁起のよい「寿」に改名されたという。同様に、福岡県の平成筑豊鉄道伊田線「あかぢ駅」は、1990年に改名。もとは地名の「赤地駅」だったが、「赤字」を連想させるとして、平仮名に変えたのだとか。

 鳥取県の智頭急行智頭線「恋山形駅」は、もともと旧国名を冠した「因幡山形駅」とする予定だった。地元住民の願い「人よ来い、山形へ」をモジって現在の名称になったそう。地元愛の結晶ともいえるだろう。

 もうひとつ、地名ではないものの、その地に伝わる伝説に由来した駅名も紹介しよう。神奈川県の横浜市営地下鉄ブルーラインの「踊場駅」。これは何匹もの猫が集まり毎夜踊っていたという猫の踊り場伝説が由来。想像するだけで猫好きにはぐっとくるではないか。また、奈良県のJR桜井線「帯解駅」は、子宝に恵まれなかった文徳天皇の皇后がその地の地蔵菩薩に祈願して懐妊した、といういわれが由来。「腹帯が解けた」という意味なのだ。

 自分が住む地域や通勤で通る駅、あるいは故郷にある駅の名前には、紆余曲折のストーリーがあることに気づかされるだろう。駅名の由緒正しき由来、さらには難読駅名も数多く掲載されているので、鉄道雑学の蘊蓄本としても愛用できる。

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