「猛老猫の逆襲」山下洋輔著
山下洋輔はミャンマーの「国立交響楽団」と共演することになった。演奏後に知ったのだが、山下が弾いたピアノには大変な秘密が隠されていた。ピアノの中に植物が生えていたのだ。ピアノのフレームの下には調律用のピンが木製の板にねじ込まれている。何かの植物の種が落ちても、そこから栄養を取ることができる。湿度の高い環境なら、水分は空気中から取れる。だが、光は?
実はこのピアノは会場の倉庫ではなく、町の楽器屋の店頭に置かれていたのだ。こうして、光、水、栄養を確保した植物はピンの間から芽を出した。
担当者はこのままでもピアノの音色には変わりがないので、山下に知らせなかったのだ。
アクシデントを乗り越えながらの旅日記。
(新潮社 1600円+税)