「空蝉の城」西野喬著
加藤清正と熊本城を巡る歴史ロマン。秀吉に能吏としての手腕を買われ、27歳で肥後半国の大名となった清正は3年後、1万の兵を率いて朝鮮ヘ出兵する。7年もの長期、清正軍に兵糧米、武器弾薬、金銭を送り続けた領国は困窮の極みに。秀吉の死によって朝鮮征伐は頓挫。肥後に帰還し、疲弊した農民と荒廃した田畑を見た清正は、復興のための大工事、熊本城建設に着工する。
琵琶湖西岸・穴太(あのう)の郷から招かれた、野石を積む卓越した技を持つ石工を棟梁に、肥後侍と領民が7年の歳月をかけて完成させた熊本城。難攻不落、史上最強と評される堅城がなぜ「空蝉」と化したのか。
穴太者の石積みにかける情熱、朝鮮人石工の煩悶、豊臣家存続に奔走した清正の深謀を描く。
(郁朋社 1600円+税)