「フィデル出陣」海堂尊著
1945年8月、ハバナ大学の中庭に入った最新型の白いフォードから長身の青年が降り立った。彼は学生同盟・FEU会長の元に行き、法学部に入学したフィデル・カストロ=ルスと名乗る。フィデルは社会を変革するために日々、弁舌を磨いているといい、高校演説大会での演説を再現した。キューバは農夫が支えているのに、「農夫」と呼ぶことは侮蔑になりかねない。自分はそれを変えたい、と。1940年の憲法成立後、キューバは後にフィデルと暗闘を繰り広げるバチスタが大統領として君臨し、再選禁止期間明けの8年後の再出馬をもくろんでいた。
アメリカ傀儡(かいらい)政権が支配するキューバで革命を目指したカストロの闘いを描く。
(文藝春秋 2200円+税)