困った注文…闇夜のカラス、透明人間、木綿と絹ごし豆腐

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「『藤娘』は初代と2代目が共に得意にしてました。両師匠の作品はよく似てる。2代目が初代を尊敬して、そっくりに切ってたことがわかります。あたしのは同じ『藤娘』でもちょっと形が違う。師匠の作品をなぞるのも一つの手法ですが、あたしは違った形を切りたいほうで」

 数年前、上野の松坂屋で「正楽三代展」が開かれ、3人の正楽の「藤娘」が並べて展示された。それを見て、初代、2代目と当代の違いがよくわかった。

 寄席では時たま、紙切り芸人を困らせようとする客がいる。

「2代目は『闇夜のカラス』という注文があったことをネタにしてましたね。カラスが提灯をくわえてるところを切ったって。それから『透明人間』ね」

 私は、「木綿豆腐と絹ごし豆腐」という注文を受けた2代目が、白い紙を半分に切り、「右側が木綿で左側が絹ね」と笑わせたのを見ている。

「はい。『豆腐』はあたしも何度か注文されたことがあります。それと『モズク』とか。たいてい聞こえないふりして、他の客の注文を切りますけど」

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