マスコミには真似できない突撃精神「『噂の真相』トップ屋稼業」西岡研介著/河出文庫(選者:佐高信)
「『噂の真相』トップ屋稼業」西岡研介著/河出文庫
「神戸新聞」の記者になって「不偏不党の立場」や「両論併記」に居心地の悪さを感じていた西岡は、行きつけの飲み屋のママから「あんたらマスコミが絶対に書けんことを書いている雑誌」として「噂の真相」を見せられ、その「怪しげな雰囲気」に魅せられて「編集スタッフ募集!」に応じる。そして東京高検検事長で次期検事総長が約束されていた則定衛の女性問題を暴く。
いわゆるマスコミはネタ元でもある検察のスキャンダルには触れられない。それが現在の信じられないような検察の腐敗を招いたとも言えるだろう。
残念ながら、「噂の真相」は2004年に黒字休刊してしまった。同誌が存続していたら、高市早苗などとっくに退陣に追い込まれていたが、西岡は森喜朗が首相だった時、森の学生時代の買春疑惑も明らかにした。警察の上層部にディープスロートがいて、それが可能になったのである。中傷動画疑惑に統一教会との関係まで真っ黒な高市をなぜマスコミは追及できないのか? 歯がゆい思いを抱きながら私は今度、「スキャンダル雑誌のつくりかた──『噂の真相』人名録」(講談社)を出した。その重要資料となったのが西岡のこの本である。
天皇制の問題で右翼の襲撃を受けた際に、西岡は編集長の岡留安則や副編集長の川端幹人と共に重傷を負った。それでもなお突撃精神を失わずにジャーナリストを続けている。
岡留も亡くなってしまったが、小さな雑誌にやれたことが、どうしてマスコミにできないのか? 「記者クラブ制」をなくせないことが大きいし、宅配制度が逆に刺激的な記事を載せない方向に動いている。「国境なき記者団」が発表した2026年の「報道の自由度」ランキングで日本は62位である。ベスト50にも入っていない。そのことをマスコミの人間は衝撃をもって恥じているのか。
タメ息や悲鳴のようにつぶやかれる「噂の真相」があればという声を、彼らは読者と共に真正面から受け止めて欲しい。
「噂の真相」は三菱重工の株式転換社債汚職事件もいち早く報じた。それについて岡留は、「軍需産業と体制中枢絡みで社会的影響力が大きすぎるから検察は政治的配慮で摘発を見送った。リクルート以上に大掛かりなもので、もし摘発されていれば、それが教訓になってリクルート事件は起こらなかったかもしれない」と言っている。 ★★★



















