著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

「パラサイト」アカデミー作品賞の快挙…日本映画の未来は

公開日: 更新日:

 韓国映画の「パラサイト 半地下の家族」がアカデミー賞の作品賞を受賞した。外国語(非英語)の映画が、作品賞を取るのは初の快挙である。

 理由はいろいろ詮索できる。賞を選出するアカデミー会員の非白人化が進んだことに加え、女性会員も増えた。選考のバリエーションが広がったのだ。海外市場に打って出る傾向の強い韓国映画自体の姿勢も大きい。

 ただ、そのような理由の前に、もっと重要なことがあると考える。アカデミー賞が、自国の作品(英語)を優先する方向性に変化をもたらしたことだ。グローバリズムという言葉は、今や風前のともしびのようになってきたが、アカデミー賞を後押しする米映画界は、映画のグローバリズムに悠然と火をともしたといっていい。

 これは、米映画界が改めて反トランプ姿勢を鮮明にしたことにも通じる。政治的、社会的な局面における自国ファーストのトランプ的な保護主義は、差別にかかわるさまざまな分断を生んでいる。この風潮が、米国だけではなく、世界レベルで進んでいるのである。

 これに、アカデミー賞=米映画界は、明快に否定的な見解を示したのだと思う。少なくとも映画の分野では、世界的な視野の上に立ち、偏りを極力排するような選考を行う。今回、そのことを内外に強烈にアピールしたといえるのではないか。影響のほどはわからないが、この大英断に勇気づけられる人々は映画関係者だけではないはずだ。

 わが日本映画界でいえば、まさに自国内の市場で充足している今の産業構造が強く揺さぶられたと思う。海外に打って出ることの必要性を、近隣の国から強烈に教えられたのだ。その教訓を無視するのであれば、日本映画界に未来はない。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  2. 2

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  3. 3

    (4)指揮官が密かに温める虎戦士「クビ切りリスト」…井上広大ら中堅どころ3人、ベテラン2人が対象か

  4. 4

    今なら炎上だけじゃ収まらない…星野監督は正捕手・中村武志さんを日常的にボコボコに

  5. 5

    「高市早苗総裁」爆誕なら自民党は下野の可能性も…“党総裁=首相”とはならないワケ

  1. 6

    志村けんさん急逝から5年、更地になった豪邸の記憶…いしのようことの“逢瀬の日々”

  2. 7

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  3. 8

    広陵辞退騒動だけじゃない!「監督が子供を血だらけに」…熱戦の裏で飛び交った“怪文書”

  4. 9

    広陵野球部は“廃部”へ一直線…加害生徒が被害生徒側を名誉棄損で告訴の異常事態

  5. 10

    (3)阪神チーム改革のキモは「脱岡田」にあり…前監督との“暗闘”は就任直後に始まった