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大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

「パラサイト」 猫も杓子も大絶賛だが人間描写が弱い

公開日: 更新日:

 プロの書き手も一般観客も絶賛の嵐だ。ほとんど批判がない。こんなことはめったにない。大ヒット中の韓国映画「パラサイト 半地下の家族」である。公開当初はネタバレ厳禁の縛りが強く、中身にはあまり触れられずに「面白い」という言葉が独り歩きした。今もしている。

 ではこの作品、絶賛の嵐が吹き荒れるほど面白いのか。「面白い」か「面白くない」かの二者択一なら、確かに面白い。ただ筆者は正直にいって、期待をはぐらかされた。金持ち家族に貧困家族がパラサイトしていく話の展開が、予想もつかない方向でぐんぐん勢いを増していく。それを支える芸術的とさえいえる画面の造形力が全く申し分なく、それらを集約して面白いのは間違いない。

 ただ、その面白さは刺激的ではない。興奮しないのだ。少なくとも、筆者はそうだった。回りくどいことをいっているのではない。そういうことが、映画の世界ではあり得る。人間描写の部分で弱さがあり、それが映画全体から受けるダイナミックな刺激、興奮に結実しないからだ。

 金持ち家族、貧困家族ともに、極めて類型的な描き方になっていた。金持ち家族は人が良すぎて、だまされ話の複雑な駆け引きに進まない。貧困家族も長らくダメ人間の集まりのはずなのに、いつの間にか理知的な詐欺師集団に変身する。そんな才能があれば、もっと早く貧困から脱出できただろう。ご都合主義がやけに目立つ。

 予想外の話の設定が最優先されている作品だから、どうしても人間描写が副次的になる。俳優陣に魅力が希薄なのも、それが理由だ。設定を食い破る複雑怪奇な人間模様をもっと見たかった。とはいえ「面白い」のに変わりないので、誤解なきように。

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