「パラサイト」 猫も杓子も大絶賛だが人間描写が弱い
プロの書き手も一般観客も絶賛の嵐だ。ほとんど批判がない。こんなことはめったにない。大ヒット中の韓国映画「パラサイト 半地下の家族」である。公開当初はネタバレ厳禁の縛りが強く、中身にはあまり触れられずに「面白い」という言葉が独り歩きした。今もしている。
ではこの作品、絶賛の嵐が吹き荒れるほど面白いのか。「面白い」か「面白くない」かの二者択一なら、確かに面白い。ただ筆者は正直にいって、期待をはぐらかされた。金持ち家族に貧困家族がパラサイトしていく話の展開が、予想もつかない方向でぐんぐん勢いを増していく。それを支える芸術的とさえいえる画面の造形力が全く申し分なく、それらを集約して面白いのは間違いない。
ただ、その面白さは刺激的ではない。興奮しないのだ。少なくとも、筆者はそうだった。回りくどいことをいっているのではない。そういうことが、映画の世界ではあり得る。人間描写の部分で弱さがあり、それが映画全体から受けるダイナミックな刺激、興奮に結実しないからだ。