小室圭さんを待ち受ける“人格審査”とは? NY州弁護士資格を持つ日本人が語る今後の課題

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過去のすべての職場からの推薦状が必要に

 最も合格から弁護士登録までの間には、まだいくつかの関門がある。それについてご説明したい。

 まず、司法試験とは別に、MPRE(エムピーアールイー)と呼ばれる弁護士倫理の試験(利益相反関係などを問うもの)がある。これは年3回(3月、8月、11月)実施されることもあり、ほぼ全ての受験生は、司法試験合格までにすでにMPREに合格している。まれに、司法試験合格までにMPREに受かっていない人がおり、その場合、司法試験合格直後のMPREを受けることになる。
 
 また、NY州は、2015年からUBE(全米統一司法試験)に参加したことにより、司法試験ではNY州法の問題は出題されなくなった(このように、試験問題が簡単になったことを、筆者は小室さん合格の理由の1つとして掲げていた)。それゆえ、NY州弁護士として登録するには、NY州法に関する試験(NYLE)を受けなければならない。ただし、これはさほど難しくなく、それこそ宅建よりも簡単である。MPREと同じく、NYLEも大半の人が司法試験合格までにすでにパスしている。

 意外に面倒なのが、司法試験に合格後、裁判所に弁護士登録を申請する際に、過去のすべての職場と現在の職場から、宣誓書(affidavitという推薦状のようなもの)をもらって裁判所に提出しなくてはならないことだ。さらに、NY州弁護士の資格を有する2名以上の知人から、申請者が良い道徳的人格(good moral character)を有することの宣誓書をもらう必要がある。

 小室さんが司法試験合格後、NY州弁護士として登録する際に、“人格審査”があるといういくつかの記事を目にしたことがあるが、それはこのことを示している。
 
■道徳的人格へのコメントが求められる

 過去と現在の職場から得る宣誓書は、NY州の裁判所に指定された様式を用いるが、その様式には、業務上のパフォーマンスの評価のほか、法律家として必要な道徳的人格(moral character to practice law)についてのコメントも求められている。宣誓書は、公証人の面前にて公証を受けるので、申請者の人格に異議のある人は、宣誓書の作成者を引き受けない(また申請者自身も、そのような人には頼まない)。また、父親や母親がどんな人物であっても、申請者本人の人格審査に両親の人格が影響することはない。
 
 宣誓書とその他の必要書類(質問票への回答など)を裁判所に提出した後、指定された日時に、指定された場所で弁護士によるヒアリングが行われる。ヒアリングといっても1人5分程度であり、内容も雑談程度のものである。

 面接官との間で「君が有名な小室さんか。せひとも頑張ってください。」くらいの会話しかなされなくても何ら不思議はない。このように、このヒアリングで登録が拒否される可能性はほとんどない。
 
 小室さんは今回、ただならぬプレッシャーの中、見事に合格を勝ち取った。ただ、合格というのはスタートラインに立ったにすぎない。弁護士としての登録を受けた後、弁護士資格を活かしてどのように活躍していくかは、小室さんの不断の努力次第であることはいうまでもないだろう。

 余談であるが、筆者所属の法律事務所の後輩弁護士、小森蘭子氏が、今回のNY州司法試験の合格者名簿の中でアルファベット順で小室さんの直前に掲載されていたことに、何か縁を感じている。

▽山中眞人(やまなか・まさと)1973年、東京都生まれ。95年、早大法学部在学中に司法試験合格。98年、弁護士登録。10年ほど実務経験を経て、09年に米ペンシルベニア大ロースクールLLM課程修了。11年、ニューヨーク州弁護士、17年、ワシントンDC弁護士に登録。09~12年に、マンハッタンで大手法律事務所ほか、日系金融機関に勤務。現在、狛・小野グローカル法律事務所パートナー。

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