柳家花緑さんが語る落語家人生のターニングポイント「一番はやはり22歳での真打ち昇進」

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先に25歳で昇進した小朝師匠が鍛えてくれた1年に感謝

 ──10代で二つ目、22歳で真打ちに。80年に25歳で真打ちに昇進した小朝師匠を抜いた。

 当時はものすごいプレッシャーがありました。実はその時期に小朝師匠が僕を助けてくれたんです。小朝師匠が芸術座で会をやられた時に、10歳の僕がゲストで出させていただいてから目をかけていただいてました。

 真打ちになることは昇進の1年前に決まるんですが、決まった時、小朝師匠が都内のホールで毎月やられる落語会に「1年間、全部出てくれ」と言ってくれたんですよ。さらに「僕の指定したネタを演ってほしいんだ」と言うわけです。小朝師匠は端的にズバッとおっしゃられる方で、その2つの言葉には「君が真打ちになった時に使えるネタを僕は教えたいんだ。君にとっていいことだから」という愛情が詰まっているんです。

 だから、小さんがあまり演らないような派手なネタを覚えて演るようにと言われました。ネタおろしを小朝師匠の会で演るわけですから、もしウケなくても小朝師匠が責任を取るということなんですよね。

「たがや」を演った日は僕が覚えきれなくてメタメタになってしまいました。「悪ウケ」といってお客さんが僕の失敗を笑ってくれるような雰囲気です。あまりのヒドさに僕は「たーがやー!」と声を張り上げるオチさえ言えなくなり、「オチを言う資格がないのでちゃんと覚えたら言います」とお辞儀して終えちゃったんですよ。それがまたウケたりしまして。

 お客さんのアンケートを見たら、「頑張ってください」「めったに見られないものを見ました」というものもありましたけど、中には「死ね」とだけ大きく書かれた紙もありました。「やめてしまえ」「時間を返せ」というのも。打ち上げに向かいながら読んでたら小朝師匠が「いいんだよ、こんなの気にしなくて!!」と言ってくれまして。

 僕にとっては洗礼を浴びた一年でしたけど、今思えば、子供の頃からのほほんと生きてきた僕を真打ちになる前に小朝師匠が鍛えてくれた。だから真打ち昇進の瞬間よりもそれまでの1年間がターニングポイントだった気がします。

■祖父の小さんは「七光ではなく十四光」と挨拶

 昇進パーティーでは師匠の小さんが冒頭に挨拶して「(花緑は)七光で真打ちになったと言われますが、それは違います」と話を始めたんです。「お、否定してくれてる」と喜んだら、「私がおじいちゃんですから十四光です」と。ドッとウケていたのが印象に残っています。真打ちといえば、3月に9人目の弟子の圭花が華形家八百八という名で昇進します。真打ちは大きな目標ですけど、なってからの方が落語家人生は長いので精進を続けてほしい。

 ──今後について。

 僕自身は還暦に向かっていきますので、大事なのは体力。老いが追いかけてきて体力、気力、記憶力も奪っていきますものね。だから大きな野望はなくて、老いる前に一つ一つのネタの密度を濃くしていき、自分なりに完成させていきたいと考えています。 (聞き手=松野大介)

▽本名・小林九 1971年8月、東京都出身。87年に柳家小さんに入門。94年に真打ち昇進。
◇主演舞台「DUMB SHOW/ダム・ショー」(4月11~19日、紀伊国屋ホール)
◇「愛海と咲楽の落語会」(19日午後7時開演、渋谷・SHIDAXカルチャーホール)

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