大阪松竹座「さよなら公演」での尾上菊五郎(八代目)と中村勘九郎の対局的なポジション
菊五郎は、大役3つのあとの夜の部では、勘九郎の『浮かれ心中』に、妻おすずをつきあう。ふざけた人たちのなかでの「まじめな人」なので、そのちぐはぐさがおかしくて、いい。大名跡を継いだのに助演というポジションは役不足ではあるけれど、ちゃんと主役を引き立てており、これは長年、父・七代目の相手役をつとめてきたからだろう。
勘九郎はその逆で、父を早くに亡くしたので、若くして主役をつとめてきた。『裏表先代萩』での細川勝元は、劇全体での主役ではないが、菊五郎の仁木弾正が殺されたあとに出て、朗々たるセリフで拍手を浴びて、幕。それまでの菊五郎の印象を吹き飛ばす、得な役。父を継いだ「浮かれ心中」は、完璧に自分のものとしている。
今年になって女形の大役が続く中村時蔵は『本朝廿四孝』で八重垣姫。同世代のなかで、新作にはめったに出ず、古典をしっかり勉強してきた成果が、今年になって開花している。
尾上右近と尾上眞秀の『連獅子』は、若さのパワーで押し切るのかと思ったら、エネルギーを拡散させるのではなく、凝縮させた感じ。首振りショーにならず、舞踊劇として見せてくれる。
(作家・中川右介)


















