真の保守ブーム
「真の保守とは何か」保阪正康著
「真の保守」をうたう本が続々登場。果たしてその中身は。
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「真の保守とは何か」保阪正康著
「いま日本を、保守と呼ばれる潮流が席巻している」「私はそれに強い違和感を覚える」「彼らの実態は『国家主義的右派』と評するべきであり、そのありようは『真正保守』からは程遠い」──巻頭からこう断言する本書は、選挙で人気取りを狙う高市政権や日本人ファーストを掲げる参政党のポピュリズム姿勢に強い違和感を示す。現政権には「国家主義的右派による『国家観』は濃厚にあるが、真っ当な『国民観』というものが希薄」という指摘は相当なもの。
著者は「真正保守」のあるべき姿を唱えた前尾繁三郎の理論を踏まえ、国民の高市支持は自己保存本能に基づく「自然的保守主義」につながる姿勢の「期待値」だが、当の高市はこれをまっとうに担えるとは思えないとも両断するのだ。
代わりに著者が評価するのは石橋湛山。生活に根差した大衆の哲学を大事にし、エリート親米派の吉田茂をライバルとしてGHQと対峙。「アメリカン・デモクラシーに内包された横暴な権力主義」と戦前に日本軍国主義をともに批判し、戦後の新しい民主主義の模索に注力した。これを継いだのが前尾であり旧宏池会の系譜。著者はさらに「真正保守」の10カ条を考案。歴史に学ぶ、甘言を敵とし、対話を厭うな、などを提起している。 (文藝春秋 1100円)
「知性の復権」先崎彰容著
「知性の復権」先崎彰容著
「真の保守」を掲げる論者で最も目立つのが団塊ジュニア世代。本書の著者もその一人だろう。近頃はユーチューブの保守系チャンネルでよく見かける。しかし著者は第1章で「右派の民族主義も左派のフェミニズムも、真の自己が承認するまで終われない、ズレを許せない、この点において実はおなじ」という。現代は対立する党派の間に妥協の余地がなくなり、互いが互いを潰そうといがみ合い続ける地獄絵図を描いているというわけだ。第2章では安田財閥の総帥を殺した戦前の右翼と安倍元首相の銃撃犯を比較し、両者にも自己嫌悪に端を発するテロという共通点があると指摘する。さらに現代の参政党をはじめとする右派政党が「保守」を名乗ることに触れて「保守」というコトバに混乱があると指摘。ついでトランプのアメリカが引き起こす世界の分断を論じる。
「です・ます」調で書かれているが、話題の転換がめまぐるしく、ユーチューブで著者を見慣れたネット右派は面食らうかもしれないが、それこそが激動する時代そのものの反映ということだろう。終章では令和の日本が持つべきはアイデンティティー(精神性)であるとし、「真の保守主義とは、冷たくバラけた、衰弱した個人主義への処方箋である」という。 (新潮社 1078円)
「真のリベラルを取り戻せ オルテガ 大衆の反逆」中島岳志著
「真のリベラルを取り戻せ オルテガ 大衆の反逆」中島岳志著
「真の保守」に対して本書が訴えるのは書名の通りの「真のリベラル」。本書はNHKの「100分de名著」が「大衆の反逆」の哲学者オルテガを取り上げた際のテキストとして書かれたもの。19世紀後半にスペインに生まれたオルテガは哲学者と評論家の二足のわらじで言論を展開。王政下でリベラルな共和政を唱えたが、内戦の激化で人民戦線政府への支持を拒んだため、左右両派から命を狙われる立場に陥った。
著者はオルテガを上から目線の知識人ではなく「大衆社会がもたらした弊害」を是正するために自ら身を投じた知識人と評価する。大衆が権力を握ると「平均人の凡庸な精神が、秀でた個性を積極的に抑圧してゆく」と指摘したオルテガ。その一方で大学知識人をも批判し、近代は自分の専門のことしかわからない学者が増え、複雑な現実や事象を単純化・単一化してしまうとも指摘する。
表面だけ見ると大衆社会を嫌悪し、左傾化した知識人社会にもそっぽを向く保守主義者のようだが、著者はむしろ「保守的であるがゆえにリベラルを徹底的に擁護した人物」だったとする。ヨーロッパ人のオルテガにとってリベラルの反対は全体主義だったのだ。 (NHK出版 1100円)



















