本屋 亜笠不文律(大阪・阿倍野)「『売れるもの』を外さず『面白いと思う本をどう見せるか』を徹底して考えています」
日曜午前の訪問。早めに着いたので、付近を偵察する。小道で「おうちも一人でお散歩?」と老婦人に話しかけられ、公園のベンチに座れば、隣の若いファミリーが「大阪城公園の桜すごかった」と教えてくれる。いやいや、人懐っこさ全開の町のようで──。
と、店主のアガサジューンさんに言うと、彼女はこう返した。
「歴史あるお屋敷に長屋、団地やマンションも多く、バランスのいい住宅街です。3年で100軒当たってここに決めました」
オープンして1年の新刊書店(+古本も少し)。その「バランスいい住宅街」の住民たちの心をもうつかんだことが、開店時刻になるや否や入ってくるお客の多さからうかがえる。
なんだか楽しい店内。私など、おもちゃ箱に入った気分だ。犬雑誌「シバマル」の横に、日刊ゲンダイの「日刊ニャンダイ」が。正面平台から「アルジャーノンに花束を」「カフェーの帰り道」「大河の一滴」、その先からは「この作家この10冊3」「なぜ日本文学は英米で人気があるのか」が、まず視線を投げてきた。
なんだか楽しい店内にあえて全方向的に8000冊
12坪の1階店内をぐるり。カフェスペースもある8坪の2階も拝見。棚6本と漫画が多いが、文芸、人文、実用、学術、子ども向け……。あえて全方向的に?
「そうですそうです」とアガサさん。 通算18年近く書店チェーンで働いてきた。転職が多く、商業漫画家としてデビューしたり、出版社で営業職をしたり。給与面の問題で教職に就いていた頃、「やはり本屋に骨をうずめよう」と考え直し、書店チェーンに中途入社。しかし、配属先の店で心身を崩し、「自分で本屋をやろう」と決意。大型店とセレクト型独立書店が並び立ち、間の“町の本屋”が消えていく時流を憂い、独立はその延長線上でもあったそう。
楽しい棚づくりは、長い現場経験によって頭に蓄積したデータによるものだったのだ。「『売れるもの』『手に取られるもの』を外さず、『面白いと思う本をどう見せるか』を徹底して考えている」ってさすが。8000冊以上の在庫の中から、この日私は珍しく漫画に手を出し、「映画は予告編の後に始まる」を購入した。
◆大阪市阿倍野区王子町4-3-18/阪堺電車北畠駅から徒歩5分。JR・地下鉄各線天王寺駅からバス10分、阪南団地前停留所すぐ/平日正午~午後8時、土日祝日午前11時~午後8時。基本月曜定休。SNS参照を。
ウチの推し本
「金木犀とメテオラ」安壇美緒著
「北海道の中高一貫女子校が舞台の青春小説です。東京出身と、地元出身の2人の秀才が主人公。寮生活の閉鎖空間。絆や友情だけじゃない。嫉妬と焦燥、憎悪と羨望。『孤独でつらくて怖いのは、この世で自分だけだと思っていた』という感覚。2人が、もがきながら成長してゆく姿に、共感を覚える人も多いはず。漫画家・志村貴子の装画にも注目です」
(集英社文庫 792円)
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