「台湾の主張」李登輝著/PHP文庫(選者:佐高信)

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壊憲と軍拡に進む高市首相に欠けたアジアへの視点

「台湾の主張」李登輝著/PHP文庫

 DV夫のトランプも、それに媚びて従う妻のような高市早苗も、共にアジアへの視点が決定的に欠落している。

 かつて、シンガポールのリー・クアンユーは「日本に軍事力を持たせることは、アルコール中毒患者にウイスキーを与えるようなものだ」と言った。また、台湾の李登輝はこの本で、「日本の場合には、憲法問題がからんでくると、国内だけでなくアジア諸国にも反発が生まれることになる。憲法九条の改正ということになれば、混乱は必至といえるだろう」と警告している。しかし、高市とその支持勢力は、そうしたアジアの声に耳を傾けず、改憲ならぬ壊憲と軍事力の大幅な拡大に踏み出している。

 それにしても李と親交があると言っていた石原慎太郎や、この本の推薦者の櫻井よしこはまともにこの本を読んだのか。彼らの日本語能力に疑問を持たざるを得ないほど、李の主張と彼らの行動は隔たっている。

 司馬遼太郎と同じ1923年生まれの李は台北高校から京都帝国大に進んだ。卒論は「日本帝国主義時代の台湾における農業問題」である。その李が日本停滞の原因に「世襲制がはびこってしまったこと」を挙げている。

「日本人はいまだに優秀で、若い人でも『この人は、政治家になると伸びるのではないか』と思われる人に会うことは少なくない。しかし、その人が本当に政治家になるにはどうすればいいかを想像すると、とても政治家になることを勧めるわけにはいかなくなる。日本で政治家になろうと思えば、一番の早道は政治家の子供に生まれるか、政治家の子女と結婚すること、あるいは政治家の秘書になって気に入られることだろう。しかし、この道が現在の日本で優れた政治家を生まないことは、もはや証明されたも同然である。現在の政治家のほとんどがこのコースをたどって政治家となり、その結果として現在の停滞を招いているのだ」

 高市は非世襲だが、自民党の副総裁に麻生太郎、幹事長に鈴木俊一という世襲議員を据え、彼らに支えられているのだから脱世襲ではない。

 李はまた、日本人はアメリカにびくびくしながら生活しているとし、アメリカに追随してきたことによって、アメリカがわからなくなっている、とも指摘している。DV夫のトランプに怯える高市にそのまま当てはまる警告である。 ★★半

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