春が来た!山にまつわる本特集
「親友は山に消えた」小林元喜著
気軽に登れる低山から冒険家でなければ挑戦しない標高の高い山まで、さまざまな種類の山がある。地続きでありながら、山は人にとっては異界でもある。行きつけになったヒマラヤ、怪談の宝庫の裏山など、今回は4つのテーマで、登山にまつわる本をご紹介!
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「親友は山に消えた」小林元喜著
中学時代に出会い、以来互いを意識しながら生きてきた友がある日突然消えた。山岳カメラマンだった友は、アラスカで滑落して命を落としたのだ。
本書は、山岳カメラマンとして活躍した平賀淳をライバルとして生きてきた著者が、平賀の最期の地となった場所へと向かうことになるまでの道のりを描いたノンフィクションだ。石原慎太郎や野口健らのアシスタントを務めながら作家を目指していた著者は、ドローン撮影で著名になっていく友に嫉妬しながら自らを鼓舞し、著書出版を達成した。そのことを2人で祝い合えた2カ月後、平賀は命を落とし、著者は精神バランスを崩した。
なぜ著者は友が命を落とした山に挑んだのか。赤裸々な自身の姿をさらしながら親友の死を乗り越えようとする著者の真摯な思いに胸を突かれる。
(小学館 2090円)
「本当の登山の話をしよう」服部文祥著
「本当の登山の話をしよう」服部文祥著
若き日に世界第2の高峰K2に登頂したのち、高い山に登って他者と記録を競う登山から、食料を現地調達する「サバイバル登山」へと目覚めた著者。本書は、現在廃村の古民家で狩猟や畑作生活を送るようになった彼が、その半生においての自らの登山についての記録をまとめたものだ。
登山とは自己表現だと表明する著者は、和田城志、山野井泰史、星野道夫、フリチョフ・ナンセン、デルスー・ウザーラ、ウォルター・ウェストンらから影響を受けてきた。お金さえ積めばどんな山でも登山可能となり、富士山すら気軽に行ける遊園地的な存在になっている今だからこそ、著者が登山に求めてきたものの正体が浮かび上がってくる。
大震災や原発事故などを経て、自然のなかで生身で生きてみようとする人としての生き方が興味深い。
(株式会社デコ 2090円)
「エベレストは居酒屋です」渡邊直子著
「エベレストは居酒屋です」渡邊直子著
日本人女性として初めて、ヒマラヤ8000メートル峰14座完登を成し遂げた著者による初エッセー本。3歳から登山やキャンプに親しみ、中学1年でパキスタンの4700メートルの雪山登山を経験した著者にとって、ヒマラヤはほっとできる居酒屋のようなもの。ふだんは看護師として働きながら、今度はどこを登ろうかと計画して次々実行していった。
さまざまなシェルパや登山家たちと出会うなかで、競争に巻き込まれずに自分なりに楽しむ登山を見つけていった。幼い頃に母親が自分を冒険企画に参加させてくれたことをきっかけに今につながる充実した生き方を見つけた著者は、現在初心者向けのヒマラヤトレッキング企画も行っている。今までの最年少参加者は9歳だとか。
興味のある方は、ヒマラヤにチャレンジしてみてはいかが。
(講談社 2000円)
「裏山の怪談」吉田悠軌著
「裏山の怪談」吉田悠軌著
都市と自然の境界にある裏山には、日常とは一線を画す不思議な空気感がある。本書は、暮らしのそばにある裏山で実際に起きた不可解な話を集めた怪談集だ。
たとえば、奥多摩のキャンプ場で野外レイブの仕事を依頼された男が、峠道がループして帰宅困難になったり、土砂崩れで機材配置をやり直す羽目になったりした挙げ句、当日には置引や交通事故が起き、散々な目に遭った体験が紹介されている。多くの人が同じ体験をしていたため、同じ場所での仕事は二度と受けないと決めたというのだ。大音量と光の洪水に合わせて人々が踊るイベントは宗教儀式と重なるため、山の神の怒りに触れたのではと彼は言う。
ほかにも再開発や事故など過去の因縁に起因しているものなど、興味深い事例計52編が収録されている。
(山と溪谷社 1760円)



















