著者のコラム一覧
スージー鈴木音楽評論家

1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966-2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。

『みんないい娘』特筆すべきはジョージのカントリー風ギターソロ

公開日: 更新日:

アルバム『ビートルズ・フォー・セール』(1964年12月4日発売)⑥

■『アイル・フォロー・ザ・サン』

 今回は1964年10月18日に録音された2曲。日本が東京五輪で大騒ぎしている頃、ビートルズは、スタジオにこもって、こんな曲をレコーディングしていたのである。

 まずは、ポールが16歳のときに書いた曲。何度も書いてきたように、急いで作ったアルバム『ビートルズ・フォー・セール』なので、アマチュア時代の曲も使って、埋め合わせをしなければならなかったということだ。


 聴いていて、歌い出しからすぐ(試聴リンク再生時間「0:05」)の歌詞「♪ユー・ルック」のところで、妙な響きになることが分かるだろう。

 昔作った曲だからか、コード進行がこなれていないのだ。

 細かく言えばイントロのキーは「C」、歌い出しから「♪アイヴ・ゴーン」(「0:09」)まではキーが「G」に変わり、次の「♪フォー・トゥモロウ~」からのキーはまた「C」。という感じで、何とも目まぐるしく安定しない(キーの解釈には幅があるので、これが唯一絶対の正解ではないので注意)。

 まぁ小理屈はさておき、つまりはまだまだ習作レベルの作品ということだ。「太陽を追っかけるぜ」という青春ドラマのような歌詞も何だか幼いし。

 なお編成はベースなし、ドラムスなし。リンゴは膝を叩いている。アルバム『ビートルズ・フォー・セール』内の最短の曲。唯一の1分台。

■『みんないい娘』

 アルバムラストで、やっとジョージのリードボーカル曲が登場。待たせ過ぎた周囲の気遣いか、満を持して歌うのはモテモテ男の歌である。

 原題「エヴリバディズ・トライング・トゥ・ビー・マイ・ベイビー」の直訳は「みんな僕の彼女になろうとしている」なのに邦題が「みんないい娘」。ちょっと意味が違うな。

 満を持して持して持して参ったからか、ジョージの歌もギターも絶好調だ。


 特にカントリー風の長めのギターソロ(「1:09」から)がいい。その後のビートルズの「ロック化」「アート化」によって、カントリー風味は後退していくが、この時期のジョージによる軽快なギタープレーは地味ながら特筆すべきと思う。

 だが、この曲の魅力は、何といってもエンディングのダメ押し(「2:17」から)。例えば、吉本新喜劇で、出演者がギャグを披露して、舞台裏に帰るときにひっくり返ったりする、ダメ押しの小ボケを想起させるものだ。

 ということはこの曲のエンディングのギターを弾いているのは「島木ジョージ」か。言うたった……。

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