著者のコラム一覧
増田俊也小説家

1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。

萩本欽一〈8〉床に頭をつけて借金取りに謝る母親の姿を見てぼろぼろと涙がこぼれた

公開日: 更新日:

コツンコツンと音がするんだよ

萩本「中学2年の頃。困っちゃってさ。固まってたの。そしたら母親がまずいと思って出てきたわけ。『いますよ、いますよ、いますよ、います。すいません』って正座して。俺こっちの部屋でのぞいてたら『いつまで待たせるんだ』とかっつって怒られてるわけよ。『はい、すいません。すいません』って」

増田「正座して」

萩本「うん。で、頭を床につけるもんだから何度も何度もコツンコツンって音がするんだよ。それ見てたら、俺の目から涙がぽろぽろぽろぽろ、あの音だね。コツンコツンってさ(話しながら泣き始める)」

増田「…………」

萩本「それはその借金取りが憎いんじゃなくて、金ないとひどいもんだなぁと。すいませんしかない。あー、もうどっか働きに行こうって。でね、社長さんになりてえなと思ってさ」

増田「じゃあ、一時期は高校は行かずに働こうぐらい思って」

萩本「はい、そうです。それで、すぐに中学3年終わったらどうしようかなと思って、働こうと思って」

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