鈴木唯人〈後編〉超名門校監督に「自分の最後の1年間を唯人に投資したい」と思わせた強み(市船橋高元監督・朝岡隆蔵)

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MF鈴木唯人(ドイツ1部フライブルグ/24歳)

 今季ドイツ1部参戦1年目ながら、23試合出場4得点2アシスト(4月14日時点)という実績を残し、クラブの欧州EL4強入りの原動力にもなっている。そもそも日本人選手が欧州5大リーグでトップ下に固定されるケースはそうない。2026年北中米W杯メンバー入りが期待される逸材の素顔を市立船橋高校時代の恩師・朝岡隆蔵監督に聞いた。(【前編】からつづく)

  ◇  ◇  ◇

 ──高1の時はAチームに入れなかったのに高2になると存在感を発揮するようになりました。

「一番大きなきっかけは高校選抜入りだと思います。唯人たちが2年になった時、僕は市船を離れることがほぼ決まっていた。だからこそ『この1年は唯人に投資したい』『本腰を入れて育てたい』と考えました。ちょうど自分が高校選抜の監督を任せてもらえるチャンスにも恵まれたので、市船は高校サッカー選手権に出られなかったですけど、唯人をメンバー入りさせました」

 ──秋山裕紀(ダルムシュタット)、染野唯月(東京V)らがいたチームですね。

「高校選抜の一員としてドイツ・デュッセルドルフの国際大会に参加。ボルシアMGやブレーメン、フランクフルトなどと戦い、最終的にはエバートンとの5位決定戦でPK負けしましたが、唯人は欧州の同世代の選手を敵に回しても十分通用していました。同じポジションに同じ2001年生まれの武田英寿(仙台)もいましたけど、彼と同等以上の出番を得て活躍しましたね。ただ、市船の練習会に来た時と同じで、何事もそつなく飄々とやってしまうので、パッションや活力が不足しているように僕には映った。本人は『え? そうなの』という顔をしていましたけど『最終的に勝敗を分けるゴール前の部分で何かが足りない』と本人も感じたのではないでしょうか。7年が経った今、同じドイツのブンデスリーガ1部でフライブルクを勝たせる仕事をしているのを見ると『唯人はドイツと縁があるのかな』『当時の経験が生きているなら嬉しいな』と感じることもありますね」

 ──朝岡さんの市船最後の1年間で鈴木選手はどこが伸びたんですか?

「彼は今と同じ攻撃的MFでプレーしていましたけど、ポジショニングについては口を酸っぱくして言いましたし、『どんどんタテパスを引き出せ』と要求しました。トップ下の選手はそこが生命線ですからね。もともと唯人はライン間でボールを受けて、前を向くプレーが自然体でできる選手。その長所に磨きをかけたいと考えて取り組みました。フライブルクでも日本代表でもその強みに磨きがかかったという評価を耳にしますが、高校時代の積み重ねが今に生きているのなら、僕はすごく嬉しいですね」

 ──「市船からはGKやDFは育つものの、ファンタジスタは出てこない」といった評判もありましたが、鈴木選手は印象を大きく変えました。

「僕が監督をしていた途中から、攻撃的スタイルを重視するようになったことも影響しているかもしれませんが、唯人が高度な技術とひらめき、アイディアを持ち合わせた逸材なのは確か。その魅力を伸ばそうという思いは強かったですね。僕が離れた後、後輩の波多(秀吾)が監督を引き継いで今に至りますけど、彼は『走る・戦う』といった市船の伝統を重んじる指導者です。気合いと根性、走力を彼にも強く求めたと思います。そこに本人もストレスを感じたかもしれませんが、今の時代はハードワークや守備は必須。波多との出会いも彼自身を伸ばすエッセンスになったはずです。高校時代に2人の監督の下、異なる角度からアプローチを受けたことも、前向きな化学変化に繋がったのかな、と僕は分析しています」

 ──鈴木選手は卒業後に清水入りし、1年目から試合に使われました。

「清水のスカウトの兵働(昭弘)さんが、熱心に追いかけてくれたのが大きかったと思います。プロ1年目の2020年はコロナ禍真っ只中。リーグ戦が3カ月休止になって大変だったはずですが、彼はクラモフスキー監督に評価され、試合に使ってもらえた。翌2021年1月の日本代表候補合宿に呼ばれた時には本当にビックリしました。その頃、彼と千葉・幕張の夢フィールドで会ったことがあるのですが、体つきが高校生の時と全然違っていた。目を見張るものがありました」

「運もあったのかな。欧州に行けたことが大きかった」

 ──鈴木選手に最後に会ったのは?

「2023年1月の高校選手権ですね。市船-高川学園戦の行われた千葉・柏の葉で唯人から直々に電話がかかってきて、その場で会いました。ストラスブールに行く直前だったと思いますけど、見た目も別人と言っていいくらい逞しくなっていた。個人トレーナーをつけて強化していたと思いますけど、想像以上の成長曲線を描いていましたね」

 ──2026年W杯の有力候補に名乗りを挙げるところまで行った要因は?

「本人の努力はもちろんですけど、運もあったのかな、と。清水で3年プレーして欧州に行けたことが大きかったと思います。最初のストラスブールでは使われなかったですけど、ブレンビー、フライブルクといろんな指導者の下で要求に応えるために、彼なりに考えて取り組んだはず。移籍したチームも良かったですね。そこは東京五輪世代の杉岡大暉(柏)や原輝綺(名古屋)たちとの違い。彼らは移籍した先で試合に出られなくなり、大舞台を逃してしましたけど、唯人は着実に実績を積み上げた。ここまで来たら、ぜひW杯に行ってほしいです」

 ──彼が森保監督に選ばれたら、市船初のW杯メンバーとなります。

「そうですね。そうなれば市船にとって大きな出来事。僕もOBとしてそういう選手が出ることを心から願っています」

 (聞き手=元川悦子/サッカージャーナリスト、絹見誠司/日刊ゲンダイ) 

▽すずき・ゆいと:2001年10月25日生まれ。24歳。神奈川・葉山町出身。地元中学から市立船橋髙に進み、3年次に背番号10をつけた。2000年からJ清水。フランス・ストラスブール、デンマーク・ブレンビーを経て2025年5月にドイツ・フラウブルグ入り。主軸としてプレーしている。2024年6月に日本代表デビュー。身長175cm・体重71kg。

▽あさおか・りゅうぞう:1976年6月21日生まれ。49歳。千葉市出身。市立船橋高3年で高校サッカー選手権優勝。日大卒業後に教員として市立船橋高に赴任。サッカー部コーチを経て2011年に監督。就任1年目の選手権を制した。高校総体2度優勝。2019年にJ千葉U18の監督に就任。2024年4月から福島・ふたば未来学園高サッカー部の監督。

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