【白パンと独裁者】ナチス敗戦の愚かな人間模様が胸に響く
ずしりと胸に響くシニカルな寓話的結論
日本でも戦争を批判する者を弾圧した。また、戦後も戦争犯罪者を美化する風潮が厳然と存続。いまだに右翼主義者の一部が東條英機らの正当性を主張する現実がそれを物語っている。
いくつもの小道具が用意されている。たとえば動物の使い方。野鳥、ウサギ、アザラシ。こうした動物は自然の中で平和に暮らしているが、人間のエゴによってその生存を脅かされる。極論すればナチス・ドイツによって侵略された近隣諸国やユダヤ人虐殺への暗喩。こうした伏線を配置しながら、映画は独裁者に熱狂しマインドコントロールから抜けきれないドイツ国民を冷笑しているようだ。
ナニングは母親のために小麦粉や蜂蜜を求めて右往左往するが、その母親は最後にどのような反応を見せるのか。すべては水の泡。これこそがシニカルな寓話的結論。ずしりと胸に響くのだ。
ラストの別れのシーンは秀逸。胸にジーンときた。この感動を胸に筆者は今年も敗戦の日に靖国神社に足を向ける。そこには本作に通じる寓話的悲劇のパフォーマンスが繰り広げられている。人間とは何かという根源的な問いかけをしたい。(配給=ビターズ・エンド)
(文=森田健司)



















