【八月の杜】東京大空襲で記憶を失った老女 自分探しの旅
新宿K’s cinemaほか全国順次公開中
8月になると、やはりアジア太平洋戦争にまつわる映画を紹介したくなる。今年はこの「八月の杜」を取り上げた。烏丸せつこが戦争の記憶を追い求める老女を演じている。
中原文(烏丸)は幼いころ空襲に遭い、それ以前の記憶を失った。両親の記憶がまったくない彼女は一番愛してほしい親から名前を呼ばれる温もりも知らないまま、戦後を必死に生き抜いてきた。
例年、春季慰霊大法要に参加し、断片的な記憶を辿って育った家や両親の名を探し求め続けている。死期を間近にしたその年も大法要に参加するが、手掛かりすら見つけられずにいた。
そんな文は、長期滞在中のホテルで若い経営者・佳奈(菜葉菜)と出会う。佳奈は経営難により地主から立ち退きを迫られていた。それぞれに痛みを抱えた二人は、やがて心を通わせていく。佳奈たちとの親交によって、文の止まっていた時間が動き始める。それは東京大空襲に起因する自分探しの旅だった……。
どこからかふらりと現れて滞在する老女を見て、ホテルのスタッフたちは「どこの誰?」「宿泊費を払ってくれるのか?」とクビをひねる。そんななか文の身元と、彼女が東京の下町にこだわる理由が明らかになる。観客は謎解きに引きつけられ、81年前の戦争の現実を突きつけられるという仕掛けだ。


















