過疎と田舎を逆手に…安全安心の「静かな観光地」がブーム

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 コロナで日本の観光産業が壊滅的な打撃を受ける中、ピンチをチャンスに変えようと努力している観光地もある。これまでならネガティブな要素だった「過疎」「田舎」も、逆転の発想で売りになる。“密”にならないことを逆手にとった観光PRも出てきた。

  ◇  ◇  ◇

 浅草雷門周辺が39%、江の島と神戸市メリケンパーク周辺も35%の大幅減――。

 au「人流の動向」によると、7月25日の主要観光地の人の流れは、前年の土日平均に比べて大きく減少。例年であれば、大勢の観光客でにぎわうはずの北海道小樽、栃木県日光、静岡県熱海、長野県軽井沢も軒並み2割以上の減。一方で愛媛県道後温泉の41%増、大分県由布院の12%増のように増えた場所もあるが、このコロナ禍において人々があえて人気の観光スポットを避けているとも考えられる。

 もっとも、先の4連休は全国的に天候が悪く、さらに減ったとはいっても、もともとが超3密で平均的な観光地より人が多い地域ばかり。夏休みを前に、“密”を避ける人の動きは今後も加速していくだろう。

■東山魁夷が愛した御射鹿池

 そんな中、「過疎」や「田舎」を逆手にとって観光PRをする動きがある。東山魁夷の幻想的な絵画「緑響く」のモデルとなった御射鹿池で知られる長野県茅野市もそのひとつだ。

「八ケ岳、白樺湖、さらには御射鹿池のある蓼科高原も含め、当地の観光スポットは施設やハコモノではない自然が大部分です。マイカーで家族単位で訪れる観光客も多く、多くの場所で密集とは縁がありません」(同市観光の担当者)

 同じ県内でも軽井沢は、食べ歩きやショッピングでどうしても密が避けられない。反対に茅野市では人が少ないことが売りだというのだ。

 地域活性化アドバイザーの金丸弘美氏がこう続ける。

「全国の観光地が壊滅的な打撃を受ける中、道の駅をはじめとする農家や漁業の直売所は売り上げを伸ばしています。その背景には、密を避けたい新たな観光のやり方がある。また、和歌山県田辺市は、人口減や高齢化で余っている古民家や空き家を宿泊やレストランなどに活用した地方創生を目指しています。これまで過疎はネガティブなイメージでしたが、観光誘致においては大きなプラス要因なのです」

 ひっそりしているくらいの、“静かな観光地”が金看板になるのだ。

 観光客数が漸減している函館市(北海道)と、秋田県の大館市、角館(仙北市)が共同でウィズコロナのPR策を打ち出している。これも静かな観光という同じ流れだ。団塊ジュニアが子供だった頃に観光客でにぎわった仙北市は、現在の旅行客数が年間440万人ほど。ジェットコースターやおしゃれなレストランはないが、乳頭温泉や玉川温泉、武家屋敷などの観光に余剰はある。

自然体験のアグリツーリズム

 静かな観光地は、さらに外国人旅行客に頼らないというメッセージもある。日本の旅行消費額は年間27・4兆円(2018年=観光庁)。このうち訪日外国人の消費は5兆円で、全体の18%でしかない。そのインバウンド需要にしても、6月までの訪日外国人は3カ月連続で99・9%減。都内はオリンピック客を当て込んだホテルが乱立したが、ことごとく痛い目に遭ったばかり。地方の観光地が日本人の観光を重点的に誘致できれば、外国人旅行客に頼らず復活の見込みはある。

「今年2月に視察でイタリアを訪れたのですが、イタリアにはアグリツーリズムを実施する農家が約2万4000軒もあります。アグリツーリズムとは、『農業や自然体験』と『農家の宿泊』からできた造語で、欧米人の休暇の過ごし方の主流となっています。農家への宿泊といっても、私が泊まったところはキッチンやトイレ、シャワーなどを揃え、日本のシティーホテル以上に快適でした。家族向けの一棟貸しもあって、『こんな山奥に誰が来るの?』という辺ぴな場所でも、現地の説明では『車やバイク、自転車でバンバンやって来るよ』と言うのです」(前出の金丸氏)

 基本的に食事なしの素泊まり施設が多いが、これは地元のマルシェ(市場)やレストランを利用させて地域活性の相乗効果を狙ったもの。家族全員で収穫した野菜や魚介類でバーベキューを行うこともある。

 日本人がイタリア旅行といえば、ローマやベネチアを思い浮かべるが、イタリアの宿泊施設利用の7割がこの農家民泊だという。コロナの終息後も流れは変わらず、日本でも東京にこれ以上、不必要なホテルを造ることはもうないだろう。

■「日本まちやど協会」で宿泊施設を検索

 金丸氏によると、まだ少ないとはいえ、日本国内でもアグリツーリズムに似たような動きが出始めているという。これから家族旅行などを考えている人は、静かな観光地を選択肢にしたい。

 例えば、ネットで「日本まちやど協会」を検索すると、古民家や空き家をおしゃれにリノベーションした宿泊施設がみつかる。鹿児島県鹿屋市の「ユクサおおすみ海の学校」は、廃校となった小学校を改装した体験・滞在型の宿泊施設。ツーリングやカヤックなど一日中体を動かせる。北海道帯広市の「HOTEL&CAFE NUPKA」(ヌプカはアイヌ語で原野の意)は、十勝のローカルフードを楽しむには絶好のロケーションだ。

移住体験に便利な「ADDress」

 また、この時期、地方への移住を考えている人もいるだろう。ただし、いきなり移住しても勝手がわからず、後で戸惑うことも少なくない。

 そこで「ADDress」というサイトを使う方法がある。定額(月額4万円~)で全国住み放題のサービスを利用でき、電気・ガス・水道代もこの料金に含まれる。もちろん、観光にも利用でき、気が変わったり、飽きたら別の土地に移る。

 週末だけ自然の中の家で過ごしたり、定年後の日本一周旅行に活用できたりもする。

「一棟貸しの施設もありますので、移住希望先に家族で住んでみて、現地の暮らしを体験することにも使えます。また、鎌倉や逗子、南房総など東京の近県にも施設はあるので、近場の移住希望にも対応できます」(前出の金丸氏)

 仕事と休暇を組み合わせた「ワーケーション」という働き方も生まれてる。リゾート地でテレワークで仕事をするのだ。

 いずれにせよ、感染の危険を冒してまで人混みで観光するのは愚の骨頂。東山魁夷が好みそうな観光地が人気になりそうだ。

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