「憲法九条は世界遺産」古賀誠著/かもがわ出版(選者:佐高信)
高市首相になって深まる古賀誠の憂い
「憲法九条は世界遺産」古賀誠著/かもがわ出版
自民党にまともな保守はいなくなったと思っていたら、OBに強固な護憲論者が残っていた。元幹事長の古賀誠である。
2歳の時に父親が戦死した古賀は行商をして姉と自分を育ててくれた母親の苦労を思い、戦争未亡人を二度とつくってはならないと決心して政治家になった。
「私は政治家の世襲というのはあまり感心することではないと、いつも冷ややかに見ている一人」だという古賀は「戦争の経験がなく、それが生み出す貧困も愚かさも知っている人たちがいなくなった」ことを嘆き、自衛隊を海外に出す法律には処分覚悟で反対してきた。
「一番腹立たしいといいますか、憲法にも違反するのではないかと思われるのは、集団的自衛権の解釈変更の問題です。集団的自衛権の行使は憲法違反だ。日本は専守防衛でやっていくのだというのが、戦後の内閣がずっと維持し、国民も支持してきたことなのに、閣議だけでこの見直しを決めてしまった。本末転倒というか、国民の皆さん方に対して、取り返しのつかない禍根を残した決め方だったと私は思っています」
安倍晋三に対する批判だが、安倍を尊敬する高市早苗が首相になって、古賀の憂いはさらに深まっている。
9条を大事だと考える人々は立場の違いを超えて協力しあうべきだと思う古賀は共産党の「しんぶん赤旗」にも登場する。自民党を支持している人も共産党を支持している人も「冗談じゃない。戦争いやだよ。俺の子どもは殺させたくない」とみんな思っていると信ずるからである。
国会議員になってから古賀は母親の手を引いて靖国神社に行った。彼女の望みだったからだが、昇殿参拝できるように準備していたのに母親は「社頭でいい」と言う。「せっかく用意したから」と案内しようとしたら、彼女は「ここは赤紙を出した東条さんも一緒やろ」と言って、入り口から中に入らなかった。父親を出征させた東条英機もここに祀ってあるだろうと言って昇殿を拒否したのである。
「そもそも、A級戦犯は犯罪者ではないという日本の国内議論が、世界で通るわけがない。中国や韓国から言われたということではありません。A級戦犯を靖国に祀ったことにより、サンフランシスコ講和条約が反故にされてしまっていると私は思います」と古賀は指摘している。 ★★★



















