著者のコラム一覧
カモシダせぶん書店員芸人

1988年、神奈川県生まれ。お笑いコンビ「デンドロビーム」(松竹芸能)のメンバー。日本推理作家協会会員。現在、都内の書店でも働く現役の書店員芸人。著書に「探偵はパシられる」など。

公開日: 更新日:

「ほくほくおいも党」上村裕香著

 この時期の書店はクリスマスや、年末年始の準備で忙しい。そんな中申し訳ないのだが、私は今書店業務を短期間おやすみさせてもらっている。先日、第1子が誕生したので育児休暇中なのだ。男性でもしっかり育児休暇がもらえる職場に感謝している。

 自分に子どもが出来たので妻の出産前から「親子」について考えるようになった。そんな中働いている書店で本書を見つけたのだが帯文が強烈だった。「お父さんに家族との対話を要求します!」。タイトルに比べてなんとも強めなメッセージ。思わずジャケ買いしてしまった。

 本書は活動家2世を扱った連作短編集である。1編目の「千秋と選挙」は女子高生の主人公、千秋が左翼政党員の父との関係に悩むところからはじまる。ここで私個人が強く言っておきたいのが、この小説はどの政治思想を持ってる人も読める物語であるという点だ。特定の政治団体を過剰にけなしたりも持ち上げたりもしていない。その中で、震災やSNS、首相暗殺など、今の日本で国民が政治をどう見ているかのリアリティーはかなりしっかりしている。そういう意味で勉強になった小説でもあった。

 ただやはり私の胸にグッときたのは親子の難しさである。千秋の兄健二は父の政治活動が原因でひきこもりに、当の父はまさに愚直で日常会話が全て政治につながってしまうような人物。だからといって政治家や人間としても最低なのか、と言われると違うなとも思わせるのが多面性を捉えていて小説としてうまいなと思う。ちなみに「ほくほくおいも党」とは活動家2世のための自助グループのことである。さまざまな問題においてこういう自助グループで同じ悩みを持つ人間とつらさを共有したり、話し合うのも大切なんだなとわかった。

 またこの家族以外にも伝説の議員だった母の介護を行う娘や、活動家ではなく芸能人を親に持つ娘や、年が離れしかも母親が違う兄と交流する息子など、さまざまな家族で悩む人物が出てくる。

 自立したい子どもは親にどう接するべきなのか、231ページに書かれていた言葉に私はとても感銘を受けた。ぜひ頭から読んでここにたどり着いてほしい。

 父親になるタイミングで読めてとても良かったなと思う一冊だった。

(小学館 1870円)

【連載】書店員芸人カモシダせぶんの「いい本入ってますよ!」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    NHK3年連続赤字で番組制作費82億円カット…タモリもダーウィンも華大も豊臣もピンチ!

  2. 2

    萩本欽一〈24〉相方の坂上二郎さんとは「遊ばない・食事しない・夢を語らない」を徹底した事情

  3. 3

    289億円負債で経営破綻した絆ホールディングスと政界の“不可解なキズナ”を福祉関係者が注視

  4. 4

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  5. 5

    日テレが「news LOG」和久田麻由子を全面バックアップできない切実事情…佐藤栞里や有働由美子との決定差

  1. 6

    「愛子天皇」潰しが国会の最優先法案? 麻生副総裁の野望に振り回される皇室と国民生活

  2. 7

    本田圭佑がサッカーW杯解説で「独り勝ち」 テレビ&CM争奪戦ボッ発で“ワリを食った”あの人

  3. 8

    高市首相の「反社会性パーソナリティー」を精神科医が懸念…海外メディアもG7での“虚勢”をさらし上げ

  4. 9

    元ボクシング世界王者・薬師寺保栄が妻に無断でレースQの愛人を「養女」に…妻が明かした苦しい胸中

  5. 10

    ソフトバンク中村晃が現役引退へ…当面の仕事は「幼稚な二軍選手」の根性叩き直し