「ほくほくおいも党」上村裕香著
「ほくほくおいも党」上村裕香著
この時期の書店はクリスマスや、年末年始の準備で忙しい。そんな中申し訳ないのだが、私は今書店業務を短期間おやすみさせてもらっている。先日、第1子が誕生したので育児休暇中なのだ。男性でもしっかり育児休暇がもらえる職場に感謝している。
自分に子どもが出来たので妻の出産前から「親子」について考えるようになった。そんな中働いている書店で本書を見つけたのだが帯文が強烈だった。「お父さんに家族との対話を要求します!」。タイトルに比べてなんとも強めなメッセージ。思わずジャケ買いしてしまった。
本書は活動家2世を扱った連作短編集である。1編目の「千秋と選挙」は女子高生の主人公、千秋が左翼政党員の父との関係に悩むところからはじまる。ここで私個人が強く言っておきたいのが、この小説はどの政治思想を持ってる人も読める物語であるという点だ。特定の政治団体を過剰にけなしたりも持ち上げたりもしていない。その中で、震災やSNS、首相暗殺など、今の日本で国民が政治をどう見ているかのリアリティーはかなりしっかりしている。そういう意味で勉強になった小説でもあった。
ただやはり私の胸にグッときたのは親子の難しさである。千秋の兄健二は父の政治活動が原因でひきこもりに、当の父はまさに愚直で日常会話が全て政治につながってしまうような人物。だからといって政治家や人間としても最低なのか、と言われると違うなとも思わせるのが多面性を捉えていて小説としてうまいなと思う。ちなみに「ほくほくおいも党」とは活動家2世のための自助グループのことである。さまざまな問題においてこういう自助グループで同じ悩みを持つ人間とつらさを共有したり、話し合うのも大切なんだなとわかった。
またこの家族以外にも伝説の議員だった母の介護を行う娘や、活動家ではなく芸能人を親に持つ娘や、年が離れしかも母親が違う兄と交流する息子など、さまざまな家族で悩む人物が出てくる。
自立したい子どもは親にどう接するべきなのか、231ページに書かれていた言葉に私はとても感銘を受けた。ぜひ頭から読んでここにたどり着いてほしい。
父親になるタイミングで読めてとても良かったなと思う一冊だった。
(小学館 1870円)



















