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井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

コーチャンフォー若葉台店(稲城・若葉台)1000坪の巨大本屋は「文化の柱の書籍、文具、CD、飲食を充足させたい」の結果

公開日: 更新日:

 びっくりした。新興住宅地に、ギリシャ神殿のような建物が突如として現れたのだから。贅沢にも1階建てで、建坪2000坪。その半分、1000坪という巨大な本屋さんだ。

 入ると、またびっくり。入り口すぐの一等地に、児童書がたっぷり置かれていたのだ。他店ではまず見られない配置。

「児童書をメインエリアに置くのは、『子どもの頃から本の文化に触れて欲しい』という創業者の理念です。岩波書店の児童文学や海外絵本も積極的に仕入れています」と、統括マネジャーの千葉國政さん。創業者さんはどんな方ですか。

「1970年代に釧路でミスタードーナツのフランチャイズ店を経営。売り上げ世界一の店舗になった頃、町の本屋に新刊本が届かないのを目の当たりにしたそうなんです。店名『コーチャンフォー』は『4頭立ての馬車』のこと。文化の柱である書籍、文具、CDとDVD、飲食の4つを充足させたいと考えたと聞いています」

 97年オープンの札幌美しが丘店を皮切りに、北海道内で6店舗。ここ若葉台店は関東初出店で、2014年にオープンした(関東には、その後つくば店も開設)──と沿革を聞く間、幾度も「すごい」と反応してしまう。

ジャンルごとにランキングをなんと100位まで提示

 児童書の向こう側の平台に、旬の本がざっと数えて200タイトル以上。「変な家」「変な地図」、それに“地元本”の「町田相模原怪談」などがおのおの50冊近く積み上げられているのも壮観。「1日に35冊売れたりする同じ本を大量に積む“縦”の仕入れに加え、関連本や関連ジャンルを揃える“横”の展開を重視しているんですね」と千葉さん。リスクが高いのにと思いきや、業界平均40%以上の返本率が「27%」、開店以来2桁成長を続けているとは。

 同じ手法で、ビジネス書も実に多彩。NHK出版の「100分de名著」シリーズと岩波文庫が大量に揃っている。かと思えば、「地方自治」「土木工学」といった専門性の高い棚も相当数ある。国内文芸、文庫本、ミステリーなどジャンルごとに「ランキング」が100位くらいまで提示されているのも画期的。

 訪問したのは平日の午後。岩波文庫棚の前で、ベビーカーを押した若い女性何人もがじっくり品定めしている光景にも、学校終わりの時刻が過ぎると、小・中学生がわいわいやってきた光景にも、心打たれた。

◆稲城市若葉台2-9-2/京王相模原線若葉台駅北口から徒歩8分/℡042.350.2800/午前9時~午後9時、無休

ウチの推し本

「『知る』を最大化する本の使い方」ぶっくま著 翔泳社刊 1760円

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