「睡蓮」白石一文著

公開日: 更新日:

「睡蓮」白石一文著

 元新聞社勤務の櫻子(67歳)が、兄・貴之の元妻である智子(72歳)と1年半ぶりに再会したところから物語は始まる。子どもの頃から優秀でエリートコースを歩み続けていた貴之は、保育園時代からの同級生だった智子と中学生の頃から付き合い始めて結婚したという経緯もあり、17年前に貴之が亡くなって以降も交流はあったのだ。とはいえ、櫻子の心の中には、貴之に大切にされていた智子がなぜ貴之を捨てたのかという疑問があった。そんな櫻子の気持ちを知ってか知らずか、智子は櫻子に自分の人生を決定づけたのは「モネの睡蓮の絵」だと話し始める……。

 2000年に「一瞬の光」でデビューして以降、「ほかならぬ人へ」「火口のふたり」などの話題作を続々発表してきた著者の最新作。人生の残り時間が気になる年代に入った人が、人生を振り返りながら、結婚とは何か、愛とは何かに向き合う様子が描かれる。智子、櫻子、貴之各人の心情を種明かししつつ、時には身勝手で歪な愛の正体に迫っていくうち、智子の睡蓮の話を契機に、櫻子も長年の秘密を明かしてしまう。ごまかせない気持ちが深く重い。

(新潮社 1980円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    北島三郎(2)2018年に次男が急逝「息子だけど、音楽の、とても良い仲間でもあった」

  2. 2

    佐藤輝明の「メジャー移籍強行突破」に現実味…“阪神残留説”も「折れるつもりはない」の声

  3. 3

    反町隆史「GTO」は視聴率3%台に…同じ“復活作”でも「プラダを着た悪魔2」と明暗分けた大きな違い

  4. 4

    高市首相が改造人事で払わされる代償…消費減税めぐり麻生副総裁の「要望」を一蹴していた

  5. 5

    故・可愛かずみさん結婚直前“謎の死”から27年…親友・川上麻衣子の投稿で思い出されること

  1. 6

    中丸雄一「アパ密会」から2年で“冠番組”…禊は済んでも「元のポジション」には戻れないワケ

  2. 7

    沖縄尚学・末吉良丞は「TJ手術見込み」でもドラフト指名されるのか…プロ入り断念、大学進学のウワサも噴出

  3. 8

    日本ハム清宮幸太郎は「代打打率.625」 スタメン落ちに文句タラタラでも新庄監督の思うツボ

  4. 9

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  5. 10

    高市首相がノー天気「物価高対策」X投稿で“赤っ恥” GDP3期プラスでも個人消費「低迷」の深刻度