「抗がん剤＝吐き気・嘔吐」というパターンはなくなってきている

吐き気をかなりコントロールできるようになった

　殺細胞作用を有する抗がん剤の代表的な副作用のひとつが「吐き気・嘔吐」です。ドラマなどでもそういった表現があるため、みなさんの中でも抗がん剤=吐き気というイメージが強いのではないでしょうか。

　こういった抗がん剤は、基本的に細胞分裂のスピードが速いところに影響が出やすいとお話ししましたが、吐き気や嘔吐が起こるメカニズムはそれとは異なっています。完全にメカニズムが明らかになっているわけではありませんが、現時点でわかっているメカニズムと対処法について紹介します。

　抗がん剤による吐き気には、急性、遅延性（遅発性）、予測性があり、それぞれ対処法が異なります。急性とは抗がん剤投与後24時間以内に起こるものを指し、遅延性とは24時間以降～5日程度まで持続するものを指します。抗がん剤の投与によって延髄にある嘔吐中枢が直接刺激され、吐き気や嘔吐が誘発されます。また、抗がん剤の影響によって体内で分泌される物質が嘔吐中枢を刺激することでも起こります。

　そのため、それらの物質の受容体に拮抗する薬（ひっつくところを止めるクスリ）が有効です。具体的にはセロトニン受容体拮抗薬やニューロキニン1受容体拮抗薬が該当します。これらのクスリは一般的な吐き気には使われることはありません。そして、薬価はちょっとお高めです。他にもステロイドや抗精神病薬が用いられることもあります。