法廷で弁護人が手錠をかけられる異常事態はなぜ起こった?
法廷で弁護人が手錠をかけられて拘束されるという前代未聞の事件が起こりました。
5月30日、大阪地裁で開かれた刑事事件の公判において、弁護人が法廷内での録音を試みようとし、机の上にⅠCレコーダーを置いたところ、裁判官から録音の有無を問われましたが、これに回答せず、その後、裁判官からの退廷命令にも応じませんでした。すると、裁判官の指揮の下、弁護人が裁判所の職員から手錠をかけられて拘束され、法廷の外へ連行されることになったのです。
裁判官が弁護人を拘束した根拠は、「法廷等の秩序維持に関する法律」です。この中には、法廷内で、裁判所の職務の執行を妨害する、もしくは裁判の威信を著しく害する行為があった場合には、その行為をした者を裁判所職員らに拘束させることができるとの規定があります。行為者に対しては、「制裁裁判」という裁判がなされ、3万円以下の過料などの制裁が科されます。実際に、今回の弁護人は、過料3万円が科されることになりました。
確かに、法廷内の録音は、原則として裁判官の許可がなければできないと定められています(刑事訴訟規則215条)。その一方で、弁護士に依頼している方は、法廷でのやりとりを正確に把握したいはずです。現状、法廷でのやりとりは、裁判所が録音していますが、職員のミスにより録音されていなかったり、やりとりの要旨が不適切だったりすることも少なくありません。しかし裁判所の録音を当事者が取得することはできません。