理系卒社長が切り込む「花王」の聖域なき改革…看板商品ヘルシアもキリンに売却
ヘルシアの売却は、そうした苦境を脱するための事業の“選択と集中”の一環で、主導するのは21年1月から社長に就いた長谷部佳宏氏だ。
長谷部氏は1960年生まれの63歳。90年に東京理科大大学院を卒業し、同年4月に花王に入社した理系出身者だ。
化学品研究所室長、ハウスホールド研究所室長、ヘアビューティケア研究所長、基盤研究セクター長、エコイノベーション研究所長などを経て、2014年3月執行役員、研究開発部副統括に就任。16年3月取締役常務執行役員、18年4月先端技術戦略室統括などを歴任し、19年3月代表取締役専務執行役員を経て、21年1月代表取締役社長執行役員に就任した。
長谷部氏の経営ビジョンは、「強くてしなやかな新生花王への変貌を急ぐ」というもの。中国人の支持を集め人気商品となった紙おむつも、中国メーカーの台頭で競争力が低下したとみるや現地生産を終了させたほか、化粧品でも約30あるブランドのうち10程度の統廃合を検討している。また、「従業員の早期退職を勧奨し、支払金の増額、転職支援を行うなど聖域なき構造改革を推し進めている」(取引銀行幹部)とされる。
一方、花王は「ヘルシア」をキリンに売却したが、キリンとは免疫機能と内臓脂肪といった健康飲料に関する共同研究は継続している。
理系出身者ならではの、理詰めの改革は実を結ぶか。