古賀茂明氏が語る「I am not Abe」発言の真意

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安倍首相は「有志国連合」の有力メンバーになりたかった

 イスラム国の人質事件では、ほとんどの大メディアが安倍政権批判を控えている。そこにあるのは、「人質が殺されそうなときに足を引っ張るな」という情緒論だが、そんな中、敢然と、しかも痛烈な言葉で安倍首相を批判したのが、元経産官僚の古賀茂明氏(59)だ。

「フランス人は『Je suis Charlie(私はシャルリー)』というプラカードを持って行進したけど、日本人は今、『I am not Abe』というカードを掲げる必要があると思う」

 テレビ朝日系の「報道ステーション」での発言に官邸は激怒、ネトウヨたちは大騒ぎとなった。一方、「よくぞ言った」という支援の輪も広がりつつある。古賀氏が改めて“過激発言”の真意を語った。

――あの発言が出た直後から、大変な反響だったと聞きましたよ。官邸の秘書官筋からテレビ朝日の上層部に抗議の電話が入り、大騒ぎになったとか。古賀さん自身には何かありましたか?

 局に対してはいろいろな声があったようですが、僕には直接ありません。でも、誰かが声を上げて、「これはおかしい」と言わなければ、太平洋戦争と同じ状況になってしまう。だから、注目度が高い番組に出た際、考え抜いて発言したわけで、反論は予想通りですし、むしろ反響の大きさに驚いているくらいです。

――戦前と同じ状況というのは、ついに日本も米国と一緒に泥沼のテロとの戦いに引きずり込まれてしまった。キッカケは安倍首相の軽率としか思えない中東歴訪と、イスラム国と戦う国への2億ドル支援表明です。多くの日本人が不安を抱えているのに、声に出せない。そんな状況ということですか?

 今度の人質事件では、いろいろな報道がされていました。でも、必ず最後の方は「テロは許しがたい行為だ」「いまは一致団結して、安倍さんの戦いを支持すべきだ」というところに帰結してしまうんですね。そうなると、あらゆる議論が封じ込まれてしまう。今は戦前のように治安維持法もないし、特高警察もいませんが、安倍政権のテロとの戦いに異論を挟むのは非国民だ、みたいな雰囲気が醸成されつつある。テロリストを擁護する気は毛頭ありませんが、日本が米国と一緒になって世界中で戦争に参加する国だというイメージをつくっていいのか。多くの人が違うと思っているのに、誰も声を出せない。それってやっぱり、おかしいでしょう。

――順番に伺います。古賀さんは安倍総理が中東歴訪以前に後藤さんが人質になっていることを知っていたという前提で話された。「臆測でものを言うな」という批判もありました。一部報道では当初10億円、その後20億円の身代金要求があり、奥さんは外務省に相談していたと報じられたからですか?

 政府はずっと前から知っていたことを認めましたよね。でも、それは官僚だった私から見れば当たり前のことでした。こうした情報に接した官僚が上に上げないということはあり得ません。あとで情報を上げなかったことが分かったら、大変な失態になるからです。大臣秘書官、次官、官房長にはすぐ上げる。同時に官邸の外務省出身の秘書官にも連絡がいくはずです。その秘書官が安倍首相に伝えないということもあり得ない。伝えなければ、大きなリスクを背負うし、伝えて損をすることはないからです。

――だとすると、この時点で官邸・外務省は身代金を払わない方針を決めたのか、「放っとけ」とばかりに無視したのか。右往左往しているうちに時間が過ぎてしまったのか。

 10、20億円程度であれば、官房機密費で払えます。まして、1月には安倍首相の中東歴訪が控えている。身代金を払って解決させる選択肢もあったはずですが、官邸にそういう提案をして却下されたのか、それさえできない雰囲気だったのか。いずれにしても、人命よりも優先させたい事情があったとみるべきです。

――それは何ですか?

 安倍首相は対イスラム国の有志国連合の有力なメンバーになりたかったのだと思います。世界の列強と肩を並べて、認められたい。それが安倍首相の願望であるのは間違いないと思います。そんなときにイスラム国に身代金を払ったことがバレたら、米英に顔向けできなくなる。そんなリスクは背負いたくない。後藤さんの命よりそちらを優先したのです。

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